皆さんは、絵カードやPECSというものを利用されてことがありますでしょうか?言葉としては耳にするけど利用はしたことがない、、、という方も多いのではないでしょうか。そこで今回は自閉症児の支援に役立つと言われる絵カード(PECS)についてのご紹介をしていきます。
絵カードとは
そもそも絵カードとは何のことでしょうか。絵カードは自分の気持ちを伝えることが苦手な発達障害児(特に自閉症児)の支援のために利用されている絵が描かれたカードになります。
例えば、「トイレに行きたい」という事を言い出しにくい子のために、「トイレ」と書いた絵と「行きたい」と書いた絵もしくは文字のカードを組み合わせて、「トイレに行きたい」という意思表示をするために利用されるものが絵カードになります。
また発達障害の特性を持つ子の中には、言葉で伝えられるよりも資格を利用して伝えてもらった方が理解しやすい子供もいます。そういった場合には、保護者や支援者が1日の流れを絵カードで見せておきます。そうすることで今日はこういう予定なのか。という事が理解しやすく、パニックを起こしにくくなるというようなメリットが生まれます。
これらで利用されるものが絵カードというものです。種類は様々ありますが、一般的には6cm程度の正方形のサイズで、上部にはイラスト。下部にはひらがなでイラストを意味する言葉が書いていあるものが一般的だと言えるでしょう。
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絵カード交換式コミュニケーションシステム(PECS)
先ほど紹介した自閉症の特性を持つ子が、自分の意思を表示させるときに絵カードを利用する。このことを専門用語で「PECS」といいます。これはコミュニケーション支援システムで、世界中、年齢関係なく、さまざまな障害を持つ方が利用しています。
PECSは6つの段階に分かれており、対象者(障害児)が一枚の絵カードを相手に渡すところから始まります。ここがスタートという意味です。その絵カードを受け取った相手はすぐにその交換を要求として受け取り、要求を可能な限りかなえてあげます。次に、絵カードの認識を教え、どのように文章を構成すればよいのかを徐々に教えていきます。更に次の段階になると、対象者(障害児)は修飾語を使ったり、質問に応えたりすることを教わっていきます。このPECSを利用することで、発語がスムーズになったという児童もいるようです。PECSは現在世界中で、190以上の研究が発表されていて、PECSの効果を裏付けています。
PECSの6つの段階
段階1「コミュニケーションの仕方」
対象者(障害児)は自分の要求を手にするためのカードを1枚選びそれを相手と交換することを学ぶ
段階2「距離と持続性」
一枚の絵カードを使い、対象者(障害児)は段階1で学んだスキルを違う人や違う場所で利用する。こうすることで持続性を高めていく。
段階3「絵カードの弁別」
自分の欲しいものを要求するために2枚以上の絵カードの中ら、正しいものを選ぶことを学ぶ。
段階4「文構成」
対象者(障害児)は簡単な文の校正を文カードと呼ばれるものを並べて文構成を学ぶ。「○○ ください」という具合。
段階5「応答による要求」
対象者(障害児)に対して質問をする。例えば「何が欲しい?」という質問をして、PECSを使って答えることを学ぶ
段階6「コメント」
対象者(障害児)に対してコメントを求める質問をする。例えば「何が見える?」「あれは何?」という質問をして、コメントを述べる。また述語を使うことで文構成の理解をさらに深める。
PECSとABA(応用行動分析)の関係性
自閉症児の支援として有名なものは、ABAやTEACCHといったものではないでしょうか。ここで簡単にそれぞれの関係性についてご紹介しておきましょう。
まずTEACCHとPECSは同列に比較することが難しいと言えます。TEACCHというのは、自閉症の当事者とその家族を対象とした生涯支援プログラムのことで、自立を目指す包括的な支援の枠組みを指す意味合いが強いのです。それに対してPECSは具体的な支援方法・アプローチ方法であるため、同列に比較することはできません。
次にABA(応用行動分析)とPECSについてですが、こちらはとても近い部分があります。というよりも、ABAという人間の行動と個人の環境の相互作用の枠組みの中で分析し、対応方法を検討していくものになります。PECSはその中のひとつという表現が出来るのです。そのため大きな枠組みで言えば、ABAという概念や考え方があり、その中にPECSという手法がある。というイメージです。
PECSが実践されてきた範囲
先ほどもPECSは自閉症児や発達障害児だけでなく幅広く利用されていると述べましたが、具体的にどのような障害の方に利用されているのか確認をしてみましょう。
- アスペルガー症候群
- アルツハイマー病
- ターナー症候群
- ダウン症
- トゥレット症候群
- トリーチャーコリンズ症候群
- レット症候群
- 一方的多少脳回症
- 人工内耳
- 口唇裂や口蓋
- 場面緘黙
- 失行・統合運動障害
- 失語症
- 発作性疾患・てんかん
- 発語・言語遅延
- 発達遅延
- 神経線維腫症
- 聴覚障害
- 脳の異常
- 脳性麻痺(CP)
- 脳腫瘍
- 自閉症
- 英語が第2言語の子どもたちの支援(ESL)
- 認識機能障害
- 重症脳外傷患者
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どこでPECSを受けられるのか
PECSは言語聴覚士さんが専門分野であると言えます。リハビリの一種としてPECSを導入しているのですが、どの市区町村でも気軽に受けられるものかと言われるとそうでもありません。都会では、PECSを導入している病院や支援センターが比較的多いのですが、地方になるとやはりその数は激減して、市内には1件もないというところもあるようです。
発達障害の診断をしてくれる病院であってもPECSをリハビリの一種として導入しているかどうかはわかりません。
そのため一度、自治体の支援センター等があればそちらに相談してみると良いでしょう。当然かかりつけ医に質問をすれば、教えてくれると思いますので、まずはそこから始めていきましょう。
PECSのキットを購入し、自宅で実践することもできるのですが、PECSキットがあればだれでもすぐにうまく出来るかというとそういうものではありません。運用するときのポイントや注意点を理解していなければきっと目的に沿った支援は出来ないでしょう。そういった意味でも、まずは一度専門家に話を聴くことをお勧めしています。
【まとめ】自閉症児(発達障害児)の支援にお勧めのPECSとは
いかがだったでしょうか?
PECSは自閉症児(発達障害児)のみならず、失語症や場面緘黙症の子供にも導入することができそうですね。障害児を育てている方の中には、「もうこれ以上何をどうしたらよいのかわからない!」と感じている方もいらっしゃることでしょう。その時のひとつの選択肢として、PECSも頭に入れておくもしかしたらどこかで役に立つかもしれません。
そしてPECSで実施したリハビリをもとに、コミュニケーションスキルが高まることも十分に期待できます。全員に当てはまる明確な正解はありません。だからこそ、さまざまな情報を収集し、やれることをひとつずつ実践していくことが重要になると思います。
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。ありがとうございました。