発達障害(自閉症)は遺伝する!?遺伝要因と環境要因まとめ

今回の記事では最近話題になっている「発達障害は遺伝するのか」という事について話をしていきたいと思います。最初に述べておきますが、結論は「まだ100%のことはわかっていない」というのが2021年時点での結論となります。そのためご紹介するすべての事項は「一定の可能性がある」という意味合いでご覧ください。今回はあらゆる書籍や論文から情報をまとめました。是非ご覧ください。

発達障害(自閉症)は遺伝するのか?

最近、Twitterでよく目にするのがこういった書き込みです。

  • 旦那が発達障害である
  • 大人の発達障害と診断されたけど子供を産んでいいのかな?
  • 子供への遺伝率はどのくらいなの?
  • 考えてみるとうちの家系は発達障害者だと思われる人が多い・・

このように関心が高まっていることがわかります。それもそのはず。一部で「発達障害は遺伝する」という情報が広まっているからです。そのようなことを聴くと、子どもを作っていいのかな。子供は欲しいけど発達障害になるのかな。という迷いや悩みが生まれてしまう事でしょう。

そのような方に少しでも確かな情報をお届けしたいと思いこのテーマで記事を書いています。

しかし、最初にも申し上げたように、この分野はまだまだ研究段階であるためどちらという結論は言えません。全体的には、遺伝する可能性が高いという結論に至っているものが多いのですが、あくまでも可能性の問題で、ある日これがひっくり返ることもなくはないです。そのためこの記事で読んだからと気持ちを一喜一憂させないようにしてください。

子育てをするうえで保護者のメンタル面の安定というのは非常に重要です。それなくして良い子育てなどできません。この記事を読んだうえで「じゃあこうしよう!」と今後の一歩に繋がれば幸いです。

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遺伝要因と環境要因について

現代では、発達障害の発症に関しては「遺伝要因」と「環境要因」に分けて考えられています。

ASDの発症リスクを高める遺伝要因

遺伝要因に関しては、さまざまな情報が行きかっておりますが、ハッキリした数字は誰にも分りません。

一説によると50%程度は遺伝する可能性がある。他の一説では70%ほどの確率であるなどと様々な数字が並んでおります。しかし、いずれの場合も遺伝要因も無視はできないという点に関しては共通していると言えます。

ここでひとつの東北大学大学院医学研究科の大隅典子教授の研究結果をご紹介します。大隅教授らは、遺伝要因の影響を調べる実験を行いました。ここで注目すべきは「PAX6」という遺伝子です。PAX6を含む11番目の染色体上の領域が生まれつきかけていると、「WAGR症候群」という先天性の病気になります。WAGR症候群の患者のおよそ20%ほどが自閉症の症状をしめすことから、PAX6は自閉症と何かしら関連があるのではないかと言われています。

そのPAX6がどのように作用するのかをマウス実験で調査した結果、PAX6に相当する遺伝子に変異をもつ父マウスの子に、自閉症と似た症状が現れたと言います。つまり、PAX6が自閉症に何らかしらの関係がある事、そしてそれが父から子へ遺伝していることが一つの実験で分かったという事です。

当然これだけの情報では断定することはできませんが、このような研究が今世界各国で行われています。現時点ではこのような研究結果を紹介することしかできません。この情報からどう考えるかは皆さん次第です。

ASDの発症リスクを高める環境要因

次に環境要因として言われる項目を紹介します。遺伝要因に比べ、環境要因は研究が進んでおり、さまざまなことが明確になってきています。今から紹介する内容は「藤原武夫 高松育子:保険医療科学:自閉症の環境要因」から引用させていただいております。ここでは「影響のある環境要因」と「影響がないと思われる環境要因」をご紹介します。まずは「影響のある環境要因」を9つご紹介します。

  1. 妊娠初期の喫煙
  2. 水銀
  3. 有機リン酸系農薬
  4. ビタミン等の栄養素
  5. 親の高齢
  6. 妊娠週数
  7. 出産時の状況(帝王切開等)
  8. 夏の妊娠
  9. 生殖補助医療による妊娠

これらが研究の結果、関連があったと思われるリストとなります。次に研究をおこなったが関連はないと考えられる項目は以下の通りです。

  1. 妊娠中のアルコール
  2. PCB
  3. 多環芳香族
  4. 社会経済的地位
  5. ワクチン
  6. 低出生体重

これらも100%証明されたものではなく、現段階の研究で分かっていることだと記載されております。ただひとつの目安にはなりますね。ASDの発症に関連があると思われるものの中でも気になる項目の詳細を紹介します。

妊娠初期の喫煙

スウェーデンで行われた研究では,Hultman らが、1974 年から1993年にかけて生まれた子どもすべてを対象にコホート内症例対照研究を行っている。症例群は 1987年から1994年の間に、10歳になるまでにスウェーデンの病院で小児自閉症(特定できない広汎性発達障害は含まれない)と診断され退院した 408 人の子どもであり、対照群は2040人の健康な子どもである。その結果、自閉症のリスクは妊娠初期の喫煙と関係していた。妊娠中の日常的な喫煙は自閉症のリスクとは関係がなかった。一方、Zhangらは中国で行った研究で、妊娠中の母親の受動喫煙は児が自閉症を発症するオッズ比が3.47倍になるとしている。

つまり妊娠初期の喫煙・受動喫煙は十分に注意したほうがよさそうです。妊娠中期から後期は関連性が見られなかったとありますが、別の研究では受動喫煙でさえ発送リスクが高まるという悔過が出ていることから、妊娠中初期・中期・後期にかかわらず、喫煙と受動喫煙には気を付けるべきでしょう。

ビタミン等の栄養素

栄養の不足も自閉症に大きな役割を果たしうる。血液中、毛髪中、もしくは他の組織中のマグネシウム、亜鉛、セレン、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンD、ビタミンE、オメガ-3 脂肪酸、カルニチンなどを含む栄養素が自閉症児では明らかに低値であることが、しばしば見られる。861人の自閉症児と123人の対照群児童を対象とした研究では、ドコサヘキサエン酸(DHA)とアラキドン酸の加えられていない育児用粉乳を与えられた子どもは、母乳栄養児よりも自閉症スペクトラム障害を発達させる率が 4.41 倍であった。

親の高齢

●父親の年齢
父親の年齢が高い場合、交絡変数で調整した後でも、それが自閉症や自閉症スペクトラム障害の明らかなリスクファクターになると報告されている。Reichenbergらの研究では、父親の年齢が10歳上がるごとに、自閉症スペクトラム障害になるリスクが 2倍以上となることが示された。

●母親の年齢
母親の年齢は自閉症のリスクファクターとして最もよく研究されているもののうちのひとつであり、交絡変数で調整する前では、多くの研究で自閉症のリスクと関連があるとされている。年齢が進んだ母親には子宮筋の機能障害や年齢による血液供給の減少などから産科合併症のリスクが高い。Croen、Eaton、Glassonらの研究では、母親の年齢は他の交絡変数で調整した後でも独立した危険因子であった。母親が 35歳以上の場合の相対リスクは、アメリカのコホート研究で相対危険度 =3.4、デンマークの研究で相対危険度 =2.3、オーストラリアの研究で相対危険度 =1.5、であったと報告されている。

相対危険度というのは、そのまま「●倍」と表現できるため、上記で言うとアメリカのコホート研究では3.4倍のリスクがあるという事になります。

一昔前までは自閉症が発症するのは「親の愛情不足」などと言われていたことがありました。でもこの考え方はあまりに乱暴な考え方と言えます。しかしこの考えがいまだに残っている人がいるのも事実です。そういった方の認識を変えていかなければ、差別や保護者に対する冷たい視線は無くなりません。子供と保護者のためにも、1日にも早く解明されることを祈ります。

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【まとめ】発達障害(自閉症)は遺伝する!?遺伝要因と環境要因

いかがだったでしょうか?

今回は論文から引用させていただいたものばかりなので、最低限の信頼性はあると思います。これから子作りを検討している方、妊娠されている方、発達障害児を育てている方などいろいろな方がいらっしゃると思います。冒頭でも申し上げましたが、この記事を読んで悲観するのではなく、ここで得た情報をもとに、今日からの行動に繋げてくださいね。

最後までご覧いただきありがとうございます。