3歳・4歳・5歳児に現れる自閉スペクトラム症とADHDの特性

以前の記事では赤ちゃん期(0歳、1歳、2歳)の時には自閉スペクトラム症が表れやすいというお話をしました。

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今回はもう少し大きくなった3歳児・4歳児・5歳児に関する特徴を主にまとめていきたいと思います。個性が見え始めるこの時期から保護者の皆様のお悩みも大きくなるものです。正しい知識を一緒に得ていきましょう。

この時期は自閉スペクトラム症とADHDが現れやすい

赤ちゃん期と言われるタイミングでは自閉スペクトラム症が表れやすいというお話をしました。3歳児・4歳児・5歳児は自閉スペクトラム症に加え、ADHDの特性が見られるようになります。

まずはそれぞれのチェックすべきポイントをまとめていきます。

幼児期の自閉スペクトラム症のチェックリスト

  • ほとんど泣かない
  • 些細な事でも激しく泣く
  • 夜中ちょっとした物音ですぐ起きる
  • 独りで寝ていても起床時に泣かない
  • 目が合いにくい
  • 指さしした方向を見ない
  • あやしたりくすぐったりしても笑わない
  • 表情が乏しい
  • 初語がかなり遅い
  • 名前を呼んでも振り返らない
  • 抱っこをするのを嫌がったり、暴れたりする

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幼児期のADHDチェックリスト

  • じっとしていられない
  • 座っていることが苦手
  • 言う事を聞かないことが多い
  • 直前に伝えたこともすっかり忘れてしまう
  • ものをどこに置いたか忘れてしまう

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自閉スペクトラム症については、以前の記事で詳しく書きましたので、ここでは3歳児・4歳児・5歳児のADHDに関する情報を主に紹介していきます。

一般的にADHDは下記3つの特性があります。

  1. 落ち着きがない
  2. 集中できない
  3. 衝動性が強い

これがADHDの代表的な特性です。これらを見ると「幼児期」と言われる3歳~5歳児の段階でADHDの診断をくだすのは医師でも難しいと言われています。そのためADHDの診断が正式にくだるのは、就学時期前後が非常に多いと言われています。これが小学校に上がった瞬間に発達障害と診断される子が増える一つの理由でもあります。

しかしこのタイミングでも、ADHDかもしれないというサインは見られます。そのサインが先ほど挙げたものになります。

幼稚園・保育園が始まることで「違い」に気づく

赤ちゃん期と幼児期は大きく異なります。子供にとっては人生で初めて外の世界に社会を築くことになるからです。

赤ちゃん期までは家庭内だけで全てが完結していました。子供にとってはほぼ危険がない状態です。しかし幼児期になると幼稚園や保育園に通うことになります。たくさんの他者と触れ合うことになるので、子供にとっても物凄くストレスのかかる時期だと言えます。さらに保護者としても、幼稚園や保育園に行くようになるこのタイミングから悩みが出るようになります。

それは「他者比較」がうまれるからです。心理学者のアルフレッド・アドラーも述べていますが他者比較はしてはいけません。したところでプラスになることは無く、その子の成長に影を落とすことになってしまいます。本来であれば「比較」は本人の過去と現在を本人がするべきものであり、周りの人が勝手にその他の人間と比較をするべきものではありません。だからと言って他者比較を全くしないで生きていくというのは至難の業でしょう。

「他の子よりも出来ない」は問題じゃない

他者比較をするとどうしても我が子の出来ていないところや、ちょっと変わっている所が目につきます。

子供は発達障害があるないにかかわらず、脳の発育速度に個人差がありますから、この時期の他者比較は意味がありません。4月生まれの子と3月生まれの子では約1年の差がありますから、肉体的にも精神的にも差があって当たり前です。しかし我が子のこととなるとどうしても不安になってしまうものです。

発達障害かどうかを過剰に疑うことは良いこととは言えませんのでその点は注意してくださいね。ただし、発達障害に関する正しい知識を得ておくことは非常に重要だと考えます。人は「得体のしれないもの」「理解できないもの」「わからないもの」に対して恐怖や不安を覚えます。正しい知識があれば、粗悪な情報に振り回されることもなく、冷静に対処できます。その対応がお子様の未来を変えると言っても過言ではありませんので、知識を身に付けることは一生の宝とも言えるでしょう。

「普通」を目指さない

他者との比較が入ると「普通はこれくらいできるはずだろう」とか「普通とはちょっと違う」と思い悩む方も多いでしょう。しかし、その普通という概念を持てば持つほど苦しくなると言わざるを得ません。2020年からの新型コロナウイルス拡大にともない、コロナ前とコロナ中とコロナ後では大きく常識が異なると言えます。そう「普通」がどんどん変わっているのです。

恐らく現在子供を育てている保護者の世代ではあまりなかった「通信制の高校」が現代では広く普及しています。2000年には100校に前後であった通信制高校数は、現在では250校にまで増えています。それに伴い生徒数も増えており、20年前とは常識が大きく変わったと言えます。

このような時代に、保護者が抱いている「普通」を頼りに、一喜一憂していては良い子育ては出来ないでしょう。情報が溢れる現代で、どういう子に育てていくのか。この点は家族で話し合いが必要なのではないでしょうか。

集団生活のルールに適応できているか

幼児期は集団生活のルールに適応できているかどうかが非常に重要となります。といっても年少さんの場合はまだ園のルールを理解できておらずうまくいかない事も多いでしょうからあまり敏感にならないでくださいね。ただ年中・年長になっても同じように注意され続けるようであれば、少しADHDを疑う必要も出てくるかもしれません。

具体的には次の項目を確認しましょう。

  • 先生の話を静かに聞けるかどうか
  • 時間になるまで座っていられるかどうか
  • 順番を守れるかどうか
  • お友達との喧嘩が多すぎないか
  • 体育や音楽発表会で周りに合わせて行動出来ているかどうか

また次のような場合は、自閉スペクトラム症の傾向を疑うことができます。

  • ひとり遊びしかしない
  • 集団行動に適応できない
  • 友達に「貸して」などの一言がいえない
  • 遊びや園のルールを理解できない

自閉スペクトラム症の3つのタイプ

自閉スぺクトラム症の人々への働きかけのタイプは3つあると言われています。

  1. 孤立型
  2. 受動型
  3. 積極・奇異型

孤立型の子どもは他者への関心が薄く、名前を呼ばれても顔を上げることもなく一人で遊び続けます。このタイプの子は一人遊びばかりになる傾向が強いと言えます。

受動型の子どもは人からの接触を避けようとすることはないのですが、自分から他者にかかわりを持とうとはしません。ただし他者の誘いを受け一緒にいることで、他者に合わせようとする心理が働くこともあるため、ストレスが強くなる可能性が高いと言えます。そのため二次障害に繋がることも考慮する必要があります。二次障害とは引きこもりや不登校、精神病などを指します。発達障がい児の支援ではこの二次障害を防ぐことが非常に重要だと言われています。

積極・奇異型の子どもは他者に積極的にかかわろうとしますが、一方的であることが特徴です。相手の反応に対しては無頓着なことが多いので、良好な人間関係を築くことが難しくなります。この場合も傷つくことが多くなるので、二次障害に気を付けていく必要があります。

ひとり遊びの傾向が強い子は自閉スペクトラム症の傾向があると言われることが多いですが、自閉スペクトラム症の中にもこのようなタイプがあるため一概にはいえないことを理解しましょう。

幼児期にADHDを疑う意味・目的とは?

私のブログでは繰り返しお伝えしている事なのですが、適切な支援のために最も大切なことは、正しい理解をすることだと考えています。

人によっては医師でも判断がむずかしいこの時期に、ADHDかもしれないと疑っても何の意味もないでしょ。と仰る方もいるかもしれません。その考え方も否定はしません。私もレッテルを貼ることがいいとは思いません。しかし、「かもしれない」と思うことでトラブルを未然に防ぐことが出来るかもしれません。

具体的な例を出せば、この時期は初めて社会と繋がる「幼稚園・保育園」に通い始めます。お友達となじめなかったり、うまくコミュニケーションが取れないがために園に行くのが嫌になってしまった。この時期にこのようなマイナスイメージが付くことは非常に大きな問題と言えます。子供は幼稚園、小学校、中学校、高校、大学とまだまだ道が繋がっているわけですから、この時期は非常に重要です。我が子がADHDかもしれない。とわかっていれば、ある程度お友達関係のトラブルも想像がつきます。であれば、未然に防ぐための対策も打てるでしょう。

そういった意味で、私は「ADHDかもしれない」と思うことは重要だと考えています。

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児童発達支援士

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幼稚園や保育園の先生方は、発達支援のプロではありません。現状日本では発達支援のプロを保育の現場に配置する義務等もありませんので、基本的には保育士さんが発達障がい児の支援も兼務することになります。ただし上記の児童発達支援士のような資格を保有されている方でもありませんから、過度の期待をするのはやめましょう。経験則の中からお子様の対応をして下さり、お話もあると思いますがそれが正しいかと言うとわかりません。

しかし保護者にとって、保育士さんの言葉はとても重たく影響力があるでしょう。こういったデリケートな内容だとなおさらです。そのため保育士さんの言葉で一喜一憂してしまう方もいるかもしれません。しかしそれは健全な事ではありません。そういった意味でも、自らが発達障害のことをある程度知っておくことも重要だと言えるでしょう。

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しかし自己肯定感を傷つけないで!

ただ注意しなければいけないのは、ADHDかもしれないというのは保護者の間に留めておくべきだと思っています。周りにもあまり声を大にして言うべきではありません。それはなぜか。子供の自己肯定感を守るためです。「自分は障害者なんだ」「自分は変なんだ」ということくらい、他者からの言葉で幼児でも理解をします。そうなると自己肯定感が低下するのは火を見るよりも明らかです。

更にいじめの対象や仲間外れの対象にされてしまうことも多くなってしまいますから、この時期に診断も出ていないのにADHDや発達障害というキーワードを子供の耳に入れないようにしましょう。

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発達支援を行う団体の興味深い記事

このサイトでも紹介している児童発達支援士を認定する人間力認定協会は、理事長ブログというものを公開しています。この理事長ブログというものがなかなか充実しているため、私もよく拝見しているのですがその中に次のようなテーマの記事がありました。

  • [体験談共有]3歳児検診で発語がひっかかり病院に行ったお話

内容を見てみると、学ぶべき点もありましたし、同じような境遇の方からすると気持ちが楽になるようなものでもあると感じました。是非一度目を通してみてください。

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【まとめ】3歳・4歳・5歳児に現れる自閉スペクトラム症とADHDの特性

以上が、3歳・4歳・5歳児に現れる自閉スペクトラム症とADHDの特性についてのまとめ記事となります。

何度も繰り返しになりますが、私は早期にレッテルを貼ることを良しとしているわけではありません。あくまでも、正しくお子様のことを理解するためにこのような知識を得ておきましょうと伝えています。その正しい理解を早期の段階でしておくことが、お子様に訪れるトラブルを未然に防ぐことになったり、保護者様のストレスを軽減することに繋がると考えています。

本質をご理解いただいたうえで、私のサイト内の記事を見て頂けますと幸いです。

いつも最後までご覧いただきありがとうございます。

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発達障害コミュニケーションサポーター資格|公式サイト