発達障害児のソーシャルスキルトレーニング(SST)を自宅で行う方法

ソーシャルスキルトレーニング(以下SST)とは、社会に適合できるようにするためのトレーニングの総称なのですが、発達障害児のSSTは非常に重要だと考えられています。そのSSTを学ぶためにどういった資格を選べばよいのかご紹介をしていきたいと思います。

ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは

まずSSTについて確認をしていきましょう。これについてはネーミングをしっかり日本語訳していくと簡単に概要が見えてきます。

  • ソーシャル=社会
  • スキル=能力
  • トレーニング=訓練

以上です。英語にしたりSSTという略語になるととても分かりにくく難しそうな印象になってしまいますが、内実はとてもシンプルなのです。この中で唯一定義がフワっとしているのが「社会」という部分になります。SSTでいうところの「社会」というものは物凄く身近なもので大丈夫です。例えば、「朝はおはようとあいさつをする」この訓練をしたら、それは立派なSSTということができます。他にも「誰かに何かをしてもらったら、ありがとうという」これも立派なSSTです。

SSTに対するイメージが大きく変わったのではないでしょうか?とにかく内実な簡単ですから、難しくとらえないようにしましょう。

概要としてはわかりやすいSSTですが、それを継続的に行い成果を上げていくことは決して容易ではありません。変化が見えにくく挫折してしまうこともあるでしょうし、子供も嫌になってしまう場合があります。そのため療育施設に子供を預けて、SSTを専門家にお願いしているという方も多いでしょう。それ自体は悪いとは思いませんが、日常の家族のコミュニケーションをうまくSSTにしていくことも十分可能ですから、そういった意味では保護者の皆さんもSSTをしっかりとマスターすることは重要だと考えます。

ここからは保護者が我が子にSSTをする際に、どのようなことを意識して行うべきなのかを確認していきましょう。

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SSTを行う際に注意する4つのこと

絶対に感情的にならない

SSTを自宅で行う際にはいろいろと注意すべきことがあります。まず絶対に意識しなければいけないことはこれです!

「感情的にならないこと!」

この点はSSTを行うときだけでなく、子育てをする時には常に意識をしておくべき点です。また療育施設などに価値があるのはこの点です。同じようなSSTをしていたとしても、施設の場合はスタッフさんが本気で感情になることはまずないのでしょう。そういった方がもしいるのであれば、プロ失格ですね。家庭では近い存在だからこそ、どうしても感情的になってしまいやすいものです。しかし感情的になると、子供はSSTに対して「つまらない」「やりたくない」「だっていつも怒られるし」という認識を抱くようになってしまいます。

これは最も避けなければならないことです。一度このような認識がついてしまうと、復旧させるのは物凄く大変です。ですから、今からSSTをやろうと思っている方はこのことを肝に銘じておいてください!

スモールステップで出来た!を実感させる

この点も保護者がSSTをやる場合に重要になる点です。保護者は、仕事・家事・育児ととても忙しい状況でしょう。そこにSSTの時間を組み込むというのは本当に大変なことだと思います。貴重な時間を使っている、この後の予定があるから時間がないという気持ちでSSTを行うと、焦りからか「成果を早く求めすぎてしまう」ことがあります。しかしSSTで最も重要になるコミュニケーション能力というものはそんなにすぐ向上するものではありません。それは発達障害児だからではなく、誰でもそうです。皆さんも今から営業のトレーニングを1日1時間やったからと言って、1,2カ月程度で数千万から数億円の株や不動産をバンバン売れるようになりますか?なりませんよね。それと同じです。

コミュニケーションに関するトレーニングは時間がかかりますから、焦らぬように取り組みましょう。

しかし、だからと言ってユックリやっているとどうしても飽きてくるもの。そこでスモールステップを用意するのです。小さな目標をひとつずつクリアできるようにゆっくりながらも、楽しんでできる工夫を行いましょう。そうすれば子供は「楽しい」という認識の中でSSTをやってくれるでしょう。

誤りを指摘しすぎない!

トレーニングをやるとなると、どうしても正しくやろうと思うのが真面目な日本人の特徴です。悪いとは言いませんが、いいとも思いません。正しさや正解を求めるように私たちの脳は幼き頃からインプットされているので、それをすぐに変えるのは難しいかもしれません。

しかし、子供の立場で立てば、毎回正されているのではやっぱりつまらなくなってしまうものです。そのため、SSTを習慣化させる段階においては、あまり正すという行為をしないようにしましょう。この時期はとにかく「楽しい」と思わせて、継続できるようにすることが一番大切です。継続できるようになって、親子共に習慣化づいてきたら、少しずつ正しく言えるようにということを目的としたトレーニングに切り替えればよいでしょう。段階を意識することは非常に大切です。

  1. 習慣になるまでは、楽しくSSTを行う!
  2. 習慣になったら、正しさの要素も加えていく!

しかし、だからと言って習慣になるまではなんでもいいのか?というとそういうことではありません。この時期に関しては正すよりも「保護者が手本を見せる」ことによって正しい方向へ導いていくというのが大切です。先に断っておきますが、正直難しいです。しかし、ここができるかどうかは非常に重要です!

ルーティンにするため曜日時間を合意の上決める

ここで重要なことは2つあります。1つは「ルーティンにすること」もう1つは「曜日時間を親子で決めること」です。

まずルーティンにすることに関しては、繰り返し述べているように習慣化させることが何より重要ですから、そのためだと考えてください。また発達障害の特性を持つ子の中には、いつもと違うという事に対して違和感や抵抗を覚える子がいるため、ルーティンにしたほうが気持ちよく行動に移すことができるようになります。

次に「曜日と時間を親子で決める」ことについては、親が勝手に決めちゃだめですよ!という意味です。子供にも選択権があります(笑)子供をうまく巻き込んで、いつやるのかを決定してください。つまりここからすでに戦いは始まっているのです。怒り口調で「SSTやるからね!土曜の15時からだからね!」と言われて、「やろう!」と思う子はいません。そうではなく「○○君とママと一緒にお話し遊びをする時間を作りまーす!ママはもっといろいろ○○のこと知りたいからさ!いつがいいかな?○○はいつなら都合がいい?」このように聞くのです。すると子供は「○曜日ならいいよ」と答えてくれます。基本はそこに合わせる形で日程を決めましょう!この前段階ができれば、この後のSSTはスムーズにいくことでしょう!

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SSTの内容は?

内容は何でも良いです(笑)というと怒られそうですが、本当に何でもいいです。これから子供が社会を生きていくうえで、こういう場面あるよね!と思われる場面を想定してトレーニングをしましょう。トレーニングというと大袈裟ですね、基本的には遊び感覚でやってくださいね。念のためSSTのサンプルを紹介します!

  • トランプやボードゲーム遊び
  • 伝言ゲーム
  • 顔・指遊び(にらめっこ・いっせいので)
  • 自己紹介の練習
  • 好きな○○を様々なテーマで話す
  • テーマを決めてディスカッション(●●についてどう思う?)
  • 相手の顔を真似るゲーム
  • クイズやなぞなぞ
  • 話を聴くときの姿勢
  • 料理や粘土で一緒に作品作り

このようなもので良いです。SSTと呼ぶには身近なもの過ぎるのでは?と思われるかもしれませんが、それこそがソーシャル(社会)トレーニングです。身近ではないものをトレーニングしても意味がありません。身近に起こることを親子で訓練しておいて、それが実際に起こった時に落ち着いて対応できるようにする。これが目的でもあるのですから。

ここで紹介したトレーニングを軸にして、あとは子供の年齢や状況によってトレーニング内容を変更していきましょう!

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【まとめ】発達障害児のソーシャルスキルトレーニングを自宅で行う方法

以上でソーシャルスキルトレーニング(SST)についての記事は終わりとなります。

読んで「そんなものでいいんだ!」と思っていただければ幸いです。発達障害関連のキーワードはなぜか英語の略語が多いので、日本人にとってはとっつきにくいものだと思います。でも掘り下げてみると案外シンプルなものが多いものです。正しい理解を深めていくことで、適切な支援ができるようになると言えるでしょう。

愛する我が子のため、少しずつ実践をしていきましょう!