「うちの子、一方的に話すばかりで会話が成り立たない」「友達とどう関わっていいかわからないみたい」「コミュニケーションの取り方を教えたいけど、どうすれば…」とお子さんのコミュニケーションで悩んでいませんか?
特に発達障害のある子どもの中には、コミュニケーションが苦手な子も多いですね。でも、これは決して「できない」のではなく、「やり方を知らない」「練習する機会が少なかった」というケースも多いんです。適切な支援と練習を重ねることで、コミュニケーション能力は伸ばすことができます。
この記事では、家庭でできる具体的な方法を中心に、会話のキャッチボール、友達との関わり方、SST(ソーシャルスキルトレーニング)の実践まで、保護者の方が今日から取り組める内容をご紹介していきますね。
発達障害とコミュニケーションの困難【基礎理解】
コミュニケーション能力を伸ばすためには、まずお子さんの特性を理解することが大切です。発達障害の種類によってはコミュニケーションの困難さの現れ方も違います。お子さんの特性を知ることで、より効果的なサポートができるようになりますよ。
ASD・ADHDのコミュニケーション特性
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは、相手の気持ちや意図を読み取ることが苦手な傾向があります。言葉を字義通りに受け取ってしまい、冗談や比喩が理解しにくいことも。視線を合わせることに違和感を感じたり、話し方が一方的になったりすることもあるでしょう。
また、特定の話題へのこだわりが強く、自分の興味のあることばかり話してしまうこともあります。相手が興味を持っていないことに気づきにくく、会話が一方通行になりがちなんですね。
一方、ADHD(注意欠如多動症)のある子どもは、衝動性から相手の話を最後まで聞かずに話し始めてしまったり、話題があちこちに飛んだりすることがあります。相手の反応を見る前に話し続けてしまったり、思いついたことをすぐに口に出してしまったりすることも。
ただし、これらはあくまで傾向であり、お子さん一人ひとりで現れ方は異なります。ASDとADHDの両方の特性を持つお子さんもいますし、同じ診断名でも個人差は大きいんです。お子さんをよく観察して、その子なりの特性を理解することが第一歩になります。
年齢別の課題と「教えれば身につく」という視点
コミュニケーションの課題は、年齢によっても変わってきます。
幼児期(3-6歳)は、挨拶ができない、名前を呼ばれても返事をしない、要求を言葉で伝えられない、遊びに誘えない・誘われても応じられないといった基本的な課題が見られることが多いといわれています。
学童期(7-12歳)になると、会話のキャッチボールができない、話題を独占してしまう、友達とのトラブルが多い、グループ活動に参加できない、冗談や皮肉が理解できないといった、より複雑なコミュニケーションの課題が現れてきます。
思春期以降は、友人関係の複雑さ、暗黙のルールの理解、場面に応じた言葉遣いなど、さらに高度なスキルが求められるようになります。
ここで大切な視点があるんです。それは、コミュニケーションスキルは「教えれば身につく」ということ。
定型発達の子どもは、周りの様子を自然に観察して、見よう見まねでコミュニケーションの方法を学んでいきます。でも、発達障害のある子どもは、観察や模倣が苦手だったり、暗黙のルールに気づきにくかったりするため、自然には身につきにくいんです。だからこそ、意識的に「教える」「練習する」機会を作ることが重要。適切な方法で継続的に練習すれば、コミュニケーション能力は確実に向上していきます。焦らず、お子さんのペースで、できることから始めていきましょう。
会話のキャッチボールを育てる実践法
会話は「話す」と「聞く」の両方が必要なキャッチボールです。発達障害のある子どもは、このキャッチボールが難しいことが多いんです。でも、段階を踏んで練習すれば確実に上達していきます。ここでは、家庭でできる具体的な練習法をご紹介します。
「聞く力」を育てる段階的トレーニング
会話のキャッチボールの第一歩は「聞く力」を育てることです。相手の話を最後まで聞く、話の内容を理解する——これができるようになると、会話がスムーズになります。
ステップ1:注目する練習から始めましょう。まずは、話している人の方を向く、目を見る(難しい場合は顔の辺りを見る)ことから。「お話を聞く時は、こっちを向いてね」と声をかけながら、優しく促してあげてください。できたら「ちゃんと聞いてくれたね」と褒めることも忘れずに。
ステップ2:最後まで聞く練習に進みます。短い文から始めて、徐々に長くしていきましょう。「今日のおやつは何がいい?」といった簡単な質問から。途中で話し始めそうになったら、「最後まで聞いてね」と優しく声をかけます。最後まで聞けたら、たくさん褒めてあげてください。
ステップ3:内容を理解する練習では、話を聞いた後に簡単な質問をしてみます。「今、何の話をしたかわかる?」「どこに行くって言った?」など。最初は選択肢を用意してあげると答えやすいですね。「公園って言った?それともお店?」というように。
日常生活の中で意識的に「聞く」場面を作ることも大切です。家族での会話の時間を持つ、絵本の読み聞かせの後に内容について話す、簡単な指示を出して実行してもらう。 こういった積み重ねが「聞く力」を育てていきます。
「話す力」を育てる家庭での練習法
「話す力」は、自分の考えや気持ちを相手に伝わるように表現する力のことです。これも段階的に練習していきましょう。
ステップ1:「要求を言葉で伝える」練習から始めてみましょう。何か欲しい時、してほしい時に、言葉で伝えられるようサポートします。「ジュース」だけでなく「ジュースをください」と言えるように、最初はお手本を示しながら練習していきましょう。
ステップ2:「5W1Hで話す」練習をしてみましょう。いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)——これらを意識して話せるようになると、相手に伝わりやすくなります。
例えば、学校での出来事を話す時、「楽しかった」だけでなく、「今日、学校で、友達と、鬼ごっこをして、楽しかった」というように。また最初は保護者の方が「誰と遊んだの?」「何をして遊んだの?」と質問しながらサポートしつつ、練習していけると良いですね。
また「適切な声の大きさ」も大切なポイントです。場面に応じた声の大きさを教えてあげましょう。図書館では小さい声、外では普通の声、というように。「今は小さい声で話そうね」「ここではもっと大きい声で大丈夫だよ」と、その都度フィードバックしてあげましょう。他にも、日記やメモを書く習慣も「話す力」の基礎になります。文字で表現する練習は、口で説明する力にもつながるんです。絵日記でも構いません。「今日はどんなことがあった?」と一緒に振り返りながら、言葉にする練習をしていきましょう。
友達との関わり方とトラブル対応
コミュニケーション能力の中でも、特に重要なのが友達との関わり方。挨拶から遊びに誘う方法、距離感の取り方、トラブルへの対処まで、具体的に教えていくことで、お子さんの友達関係はぐっと良くなっていきます。
挨拶・声かけから遊びに誘うまで
友達関係の第一歩は挨拶から。当たり前のようですが、発達障害のある子どもにとっては、いつ、誰に、どんな挨拶をするか、意外と難しいんです。
朝会ったら「おはよう」、帰る時は「さようなら」「バイバイ」、何かしてもらったら「ありがとう」——場面ごとに使う言葉を整理して、練習します。家族で挨拶の練習をする、鏡の前で表情も含めて練習する、といった方法があります。
声のかけ方も大切です。例えばいきなり話し始めるのではなく「○○ちゃん」「○○くん」と友達の名前を言ってから話しかける。相手が気づいてくれるのを待つ——こういった細かいステップを一つひとつ確認したり、教えたりしていきましょう。
遊びに誘う方法は、ロールプレイで練習するのが効果的です。「一緒に遊ぼう」「鬼ごっこしない?」といったフレーズを、保護者の方と練習してみてください。最初は保護者の方がお手本を見せて、次にお子さんが真似する。何度も繰り返すことで、自然に言えるようになっていきます。
また誘い方だけでなく誘われた時の反応も教えてあげましょう。「いいよ」「うん、遊ぼう」と受け入れる時の言い方、「ごめんね、〇〇だから今はできない」と断る時の言い方。両方の選択肢があることを教えて、練習してあげることが大切です。
「距離感」と「暗黙のルール」の教え方
友達づきあいで難しいのが「距離感」。物理的な距離も、心理的な距離も、発達障害のある子どもには明示的に教える必要があります。
「これは言っていい」「これは言わない方がいい」という区別も具体例で教えていきましょう。(相手の外見について否定的なことを言わない、人の失敗を笑わない、秘密は守るなど)
また当たり前だと思われていること「順番を守る」「貸してと言ってから使う」「ありがとうと言う」も一つひとつ丁寧に教えていきましょう。
ケンカやトラブルへの対処法
友達との関わりの中では、どうしてもトラブルが起こることもあります。大切なのは、トラブルが起きた時にどう対処するかを教えておくこと。
まず「やめて」と言う練習をしておきましょう。嫌なことをされた時、黙って我慢したり、いきなり手を出したりするのではなく、「やめて」「いやだ」と言葉で伝える。これができるだけで、トラブルの拡大を防げることも多いんです。相手が「やめて」と言ったら自分もやめる——これも同時に教えます。自分の気持ちを伝えることと、相手の気持ちを尊重すること、両方が大切だと理解できるようサポートしてあげてください。
また、謝り方も大切です。「ごめんなさい」だけでなく、「○○してごめんなさい」と何について謝っているか明確にすると、相手も許しやすくなったりします。
他には、トラブルが起きた時に大人に助けを求めることも大切なスキルです。「先生、困ってます」「お母さん、どうしたらいい?」と素直に聞いたり相談できることは、決して弱さではなく、賢い対処法です。一人で抱え込まずに相談できることを肯定的に教えてあげましょう。
SSTと専門的支援の活用
ここまで家庭でできる方法をご紹介してきましたが、より体系的に学ぶ方法として「SST(ソーシャルスキルトレーニング)」があります。SSTは専門機関だけでなく、家庭でも実践できるトレーニング方法なんです。また、専門的な支援を活用することで、より効果的にコミュニケーション能力を伸ばしていくことができます。
家庭でできるSST実践(ロールプレイ・ソーシャルストーリー)
SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは、社会生活で必要なスキルを、具体的に教え、練習するトレーニングのこと。難しそうに聞こえますが、家庭でも十分に実践できるんです。
ロールプレイ:SSTの基本的な方法です。特定の場面を想定して、役割を演じながら練習します。例えば、「友達におもちゃを貸してもらう場面」を練習するなら、まず保護者の方がお手本を見せます。「○○ちゃん、そのおもちゃ貸してくれる?」と実際にやってみせる。次に、お子さんが同じことをやってみます。うまくできたら「いい感じだね!」と褒め、改善点があれば「もう少し優しい声で言ってみようか」とフィードバック。何度か繰り返して、自然にできるようになるまで練習します。
ソーシャルストーリー:特定の場面での適切な行動を、短い物語形式で説明したものです。絵や写真を使って、視覚的にわかりやすくするのがポイントです。「給食の時間」「図書館に行く時」など、お子さんが苦手な場面を取り上げて、一緒に作ってみましょう。例えば「給食の時間」なら、「給食の時間になったら、手を洗います」「自分の席に座ります」「『いただきます』と言います」というように、順を追って説明します。実際の場面の前に読むことで、何をすればいいか思い出しやすくなるんです。
絵カード:「うれしい」「かなしい」「おこっている」などの感情を表す絵カードを使って、感情を認識する練習ができます。また、「順番」「待つ」「貸す」などの行動を表す絵カードで、適切な行動を視覚的に示すこともできます。
家庭でのSSTは、日常生活の中で自然に取り入れることがコツ。朝の支度、食事、お風呂、寝る前——毎日の生活の中に、ちょっとした練習の機会はたくさんあります。また練習結果がすぐに出るとは限りません。焦らず、楽しみながら、継続することが大切です。
専門機関のSSTプログラムと学校との連携
家庭でのSSTに加えて、専門機関のプログラムを利用することで、より体系的にスキルを身につけることができます。
療育施設や発達支援センター:専門家によるSSTプログラムが提供されています。小集団でのトレーニングが多く、同じような課題を持つ子どもたちと一緒に練習できるのが特徴。実際の対人場面に近い状況で練習できるので、学んだことを実生活に活かしやすいんです。
放課後等デイサービス:SSTを取り入れているところが増えています。遊びや活動を通じて、自然な形でソーシャルスキルを学べる環境を提供してくれます。
学校との連携:担任の先生やスクールカウンセラーに、お子さんの特性やコミュニケーションの課題を伝え、学校でもサポートしてもらえるようお願いしましょう。通級指導教室がある学校なら、そこでSSTを受けられることもあります。連携する時は、家庭で取り組んでいることを具体的に伝えると良いですね。「こういう練習をしています」「こういう声かけが効果的でした」といった情報を共有することで、学校でも同じようなサポートをしてもらいやすくなります。
お住まいの自治体の発達支援窓口や、発達障害者支援センターに問い合わせれば、利用できるプログラムの情報を得られます。また、人間力認定協会の児童発達支援士やSSTスペシャリストのような資格講座で、保護者の方自身がSSTについて学ぶことも、お子さんを支える力になります。
継続的なサポートと成功体験の積み重ね
コミュニケーション能力を伸ばすには、継続的なサポートが欠かせません。一度や二度の練習で身につくものではないからこそ、焦らず、長い目で見て取り組むことが大切です。
小さな成功体験を積み重ねる:「今日は挨拶ができた」「友達と少し会話できた」といった小さな進歩を、その都度認めて褒めてあげましょう。大きな目標を掲げるよりも、達成可能な小さな目標を設定して、一つずつクリアしていく方が、お子さんの自信につながります。できなかったことを叱るのではなく、できたことに注目する姿勢が重要です。完璧を求めず、「今日はここまでできたね」「前よりも上手になったね」と、成長を認めてあげてください。
お子さんのペースを尊重する:他の子と比べたり、急かしたりせず、その子なりの成長を見守ることが大切です。コミュニケーションが得意になるスピードは、お子さんによって違います。ゆっくりでも、確実に前に進んでいることを信じてあげてください。
また困った時には、一人で抱え込まず、専門家や同じ立場の保護者と相談することも大切です。発達障害の親の会や、療育施設での保護者同士の交流なども、貴重な情報交換や励ましの場になります。
まとめ:コミュニケーション能力は伸ばせる!
発達障害のある子どものコミュニケーション能力は、適切なサポートと継続的な練習で伸ばすことができます。
この記事でご紹介した方法は、今日からでも始められることばかりです。まずは、お子さんが楽しめそうなことから一つずつ試してみてください。大切なのは、完璧を目指さず、小さな進歩を喜び合うこと。「できない」ではなく「まだ練習中」という視点で、お子さんの成長を見守ってあげてくださいね。
また、保護者の方の温かい理解とサポートが、お子さんのコミュニケーション能力を伸ばす最大の力になります。必要に応じて専門機関のサポートも活用しながら、お子さんのペースで、焦らず取り組んでいきましょう。お子さんが友達と楽しく関われるようになる日を信じて、一緒に歩んでいきましょう!
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