発達障害によって引き起こされる二次障害 うつ病編

発達障害の特性を持つ方に起こりえる「二次障害」の内の1つ、「うつ病」を紹介していきたいと思います。うつ病は発達障害の二次障害の中でも最も多くみられる症状と言われています。症状やきっかけ、対応策や体験談などを見ていきましょう。

うつ病とは

うつ病は、気分障害の一つです。一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった精神症状とともに、眠れない、食欲がない、疲れやすいといった身体症状が現れ、日常生活に大きな支障が生じている場合、うつ病の可能性があります。気分障害には、うつ病の他に、うつ病との鑑別が必要な双極性障害(躁うつ病)などがあります。うつ病ではうつ状態だけがみられますが、双極性障害はうつ状態と躁状態(軽躁状態)を繰り返す病気です。うつ病と双極性障害とでは治療法が大きく異なりますので専門家による判断が必要です。

引用元:厚生労働省 知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス

二次障害を起こすきっかけとは

うつ病に限らず二次障害が引き起こされるきっかけは過去の経験からくることが非常に多くあります。様々な場面でコミュニケーションがうまく取れない、周囲の行動に合わせて動くことができずに叱られたり、注意をされる。それ以上に行動を制限されてしまうこともあります。これらが繰り返されていくうちに、周囲の人達から理解されずに「変なことを言う子だな」「変な行動を取る子だな」と言われることが多くあります。

こうして本人には成功体験ではなくストレスや辛い経験が蓄積されていき、「自分のことは誰も分かってくれない」「何をしてもうまくいかない」「また叱られる」「どうせ失敗してしまう」などネガティブな感情が多くなり、自己肯定感の低下へと繋がっていきます。そして最終的に情緒不安定やさらなる不適応が二次障害の発症へとつながるといわれています。

注意していただきたいのは、二次障害は1度や2度の失敗で引き起こされるものではありません。特性が原因となって生じる困難が何度も何度も積み重なって、周囲の理解も得ることができなかった時に発症することが多いと言われています。

二次障害を防ぐためには?

発達障害における二次障害とは必ずしも発達障害を持つ方全員が発症するわけではありません。周囲が発達障害のことや、発達障がい児本人のことを見て良き理解者となることがとても大切です。

発達障害は外見ではほとんど分からないことがあります。また、発達障害の診断は出なくとも発達障害の傾向にあるグレーゾーンの方もいます。そのため、単に忘れ物が多いという事象一つを見ても、本人の不注意で忘れ物が多いのか、それとも発達障害の特性によって忘れ物が多いのか区別がつきにくいことがあります。

そこで「しっかり確認をしろ」「真面目にしなさい」と叱責をしてしまうと本人の自己肯定感の低下に繋がってしまう危険性があります。また、周囲と同じようにできることがあれば、まったくできないことがあるためそれが原因となり周囲にからかわれて傷つき、精神的トラウマになることもあります。このように発達障害は人によって特性、得意なことや苦手なことは大きく変わってきます。そのため正しく理解することで、発達障がい児一人一人に対して適切なサポートを行うことができます。

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うつ病になりやすい人とは

発達障害の特性を持つ方の中でうつ病は二次障害として最も多いと言われています。自閉スペクトラム症(ASD)の特性を持つ方ではコミュニケーションが苦手だったり、感覚過敏などによって集団に適応できず、本人が失敗をしたという経験が積み重なっていき、二次的にうつ病に陥り易いパターンが多いようです。

注意欠陥・多動症(ADHD)の特性を持つ方でしたら、自分の力を十分に発揮できずに課題を達成できないことが続き、叱られたり注意されることが多く、自信を失い自己肯定感の低下が起こりやすくあります。これが積み重なりうつ病になりやすいと言われています。

もちろん、これ以外の特性を持つ方でも二次障害としてうつ病になる可能性はありえます。もし気になる方は以下でセルフチェックをできるウェブサイトをご紹介いたしますので、そちらから確認してみるのもよいのではないでしょうか?

チェックリストはあくまでも簡易的な診断補助ツールであり、診断を確定するものではありません。これによってうつ病の疑いが出なかった場合でも、悩みが続く方や周囲の方で気になる方がいるようでしたら、まずは医師に相談してみることをおすすめします。

>うつ病チェックリスト
https://www.cocoro-h.jp/Depression

二次障害としてうつ病と診断された時には?

今まで見てきたように二次障害は周囲の理解を得られないなどの環境や対人関係の問題によって引き起こされるケースが多くみられるため、症状に応じた治療が行われているようです。

うつ病の場合は精神疾患のため、主に精神科で治療が行われています。治療法も様々あるようですので、担当の医師と相談しながら進めていきましょう。困ったことや悩みごとは中々言い出しづらいものですが、言って相談してみることで新たな道が開けることがあります。溜め込まずにまずは相談してみましょう。

自己肯定感を高めることで二次障害を予防する?

発達障害の特性を持つ方はどうしても人に叱られたり、注意されることが多く自己肯定感が低い傾向にあります。そのため、家庭内や施設などで自己肯定感を高める工夫をしておくことで、何かの出来事で自己肯定感が低下しても負のサイクルに入らないようにできる可能性があります。

以下の記事にて自己肯定感を上げる工夫を紹介していますので、よろしければご覧ください。

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・発達障がい児の自己肯定感を高める3つの掟
・肯定的な言葉が子どもを伸ばす

二次障害としてうつ病になった方の体験談

これは保育園の頃に学習障害を診断された女性の体験談です。個人情報などが含まれるため一部情報を置き換えています。

彼女(Aさん)は保育園の頃に学習障害と診断されました。小学校の頃からその特性を持つことで、いじめられた経験が続き精神的に傷つくことが多くありました。また、勉強面でもできないことがありそれもAさんの自己肯定感を下げる要因になっていました。

中学生の頃はAさんのことを理解してくれる友人もいたのですが、高校に進学してからは周囲の理解を得られずに辛い思いをかなりしていました。そして、学校生活で周囲との対人関係が上手くいかないことがきっかけとしてうつ病・登校拒否・摂食障害などが表れました。

その後は心療内科に通い、ゆっくりと落ち着ける環境を作ることから始め、自分の悩み事などを先生に相談する期間が続きました。自分のことを理解してくれる医師や、家族、2年生になった時の担任の先生などの存在のお陰もあり長い時間はかかりましたが、少しずつ学校に通えるようになりました。Aさんは目標を見つけたこときっかけとして、立ち直り今では専門学校に通っています。

時々疲れてしまうことはあっても、休んでも大丈夫と思えることで落ち込みすぎることは少なくなったようです。

 

【まとめ】発達障害によって引き起こされる二次障害 うつ病編

以上が発達障害によって引き起こされる二次障害 うつ病でした。二次障害に陥るきっかけも、二次障害から立ち直るきっかけも周囲の人の理解や環境というものが大きく影響していました。

何かお悩みの方は、まずはお近くの支援機関などに相談へいってみるのはいかがでしょうか?

外部サイト
・発達障がい者支援センター
全国精神保健福祉センター

他にも児童相談所や子育て支援センター、または専門の医療機関など様々な場所で相談できます。1人で思い詰めてしまうとマイナスの思考に陥り易いものです。誰かを頼ることは決して悪いことではありません。是非、足を運んでみてください。

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