発達障害児(自閉症の子供)が混乱してしまう声掛け6選

発達障害児には大人が普通に言った言葉をうまく理解できないことが多々あります。それが大きなストレスになり、パニックとなり、癇癪をおこしたり、大きな声を出すということに繋がるのです。では具体的にどのような言葉や態度が混乱させてしまうのでしょうか。この記事では代表的な6つを紹介していきます。

発達障害児(自閉症児)が混乱してしまう声掛け6選

発達障害児に声掛けをするときの鉄則は、

「あいまいな表現を極力避ける」

これが最も大切になります。発達障害の中でも特に自閉スペクトラム症を持つ子供の場合は、この傾向が顕著になります。あいまいだったり、遠回しだったりという表現の理解は苦手です。逆に、絵にしやすいことや、具体的なことならばよく理解ができます。

そのため親御さんや周りの大人が、意識をして言葉を選んであげるだけで、今よりもずっとスムーズなコミュニケーションが取れるようになる可能性があるのです。自閉症だからコミュニケーションは難しいな、と決めつける前に、できることを一緒に見ていきましょう。その結果、子供さんのストレスは軽減し、自己肯定感が高まっていくことでしょう。

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決まり文句

「まっすぐ帰りなさい」と言われると、「僕の家には曲がらないと帰れません」などと答えてしまいます。通常は「まっすぐ」と言われたら「寄り道をせず帰りなさい」という意味なんだなと解釈しますが、発達障害児はこの解釈が苦手です。

解決方法は簡単ですね、シンプルにそのまま伝えてあげればOKです。

「まっすぐ帰りなさい」

  ↓

「寄り道をせず家にかえりましょう」

これだけでミスコミュニケーションを避けることができます。

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誇張表現や冗談

例えば、友達がすぐにできるということを「1秒で出来るよ」と誇張して言うと、その言葉通りに受け取ってしまい「1秒で出来るわけがない」と真面目に反論してしまいます。その結果、友達間のトラブルになってしまうということはよくあることです。

この例のように友達がそのような表現をしている場合は、直しようがありませんから、この時のポイントは2つ。

1つは子供さんと、このような表現もあるということを日常的に理解させる。「1秒で出来るっていうのはね、僕は早くできるんだ!ってことを言いたいのよ。本当に1秒で出来るってことではないの」このように保護者が子供さんのための辞書になってあげてください。根気のいる作業かもしれませんが、人間関係のトラブルはそのまま発達障害の2次障害へと繋がります。2次障害というのは、不登校、ひきこもり、うつ、精神疾患などです。そうならないようにひとつずつ教えてあげましょう。

もう1つは、もし「おかしい!」と感じても、あまり強い口調で言ったらだめだよということも理解させておくと良いでしょう。いきなり断定的に言葉を出すんじゃなく、「本当に?」などと疑問形で言葉を出させるようにしておくとあらゆる場面のトラブルに対応できるのではないでしょうか。

否定的な表現や命令

「ダメ」といった否定的な表現を使ってしまうと、子供は自分自身が非難されているように受け取ってしまいます。自己肯定感が下がるきっかけにこれだけでなってしまうということです。

また、「○○しなさい」という命令口調の表現も苦手です。命令されると怒られているように感じてしまう子もいます。

そのため、命令ではなく、促しをしましょう。

「早く寝なさい」

  ↓

「早く寝ようね~」

これでいうこと聞くのか!?と思われるかもしれません。もちろんその時の状況によりけりです。命令や否定語を直接言っても、子供はその場では言うことを聴いて楽かもしれません。しかしその後の人生に大きく影をおとすことになりかねないことを理解してください。自己肯定感はそれほど重要なものなのです。

慣用句やことわざ

例えば忙しいときに「猫の手も借りたい」と言ったりすることがあると思います。当然これは「とても忙しい」ということを意味していますが、発達障害児には、そのことを意味しているとは想像ができません。

この場合もストレートに、「とても忙しいから、手伝って」といったほうがずっと良いでしょう。人間は時として、自分の頭の中にある「最高の表現」を使って知性をアピールしたくなるものです。ただコミュニケーションをとるうえで最も大切なことは、「相手に伝わる言葉で話せるかどうか」です。

いくら語彙力が豊富でも、相手に伝わらない言葉ばかり使うようでは、コミュニケーションが上手とは言えませんよね。相手に合わせて臨機応変に変えることができる。それがコミュ力ですし、人間の真の知性です。

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代名詞

(テーブルの上にある)「それとって!」と子供に行っても、ぜんっぜん伝わらなくてびっくりすることありませんか?これは聴いていないとか、手伝う意欲がないとかではなく、ただ単に「それ」という代名詞が理解できていないのです。

「それ」「これ」「あれ」といった代名詞は、大人でさえも相手との関係性や理解度が低いと、勘違いしてしまうことがあります。そのため発達障害児にとってもこれは大きな壁なのです。

しっかりと意味が通じるように丁寧に伝えましょう。

「それとって!」

  ↓

「テーブルの上にあるふきんをとって」

 

遠回しな表現

家に帰る時間が迫っているときに「そろそろ帰る時間じゃないかな?」とか「おうちの人が心配しているんじゃない?」と遠回しな表現で伝えても、「いや、心配してないよ」と言って、また遊び始める。このようになりがちです。

そのためこの場合も、「5時になったらから家に帰りましょう」と伝えるほうが良いでしょう。ミスコミュニケーションは大人側にもストレスがかかりますが、言われている子供の方にも同様のストレスがかかっているということを理解しましょう。

双方のために、わかりやすい表現を使うことが大切だと思います。

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発達障害児がわかる言葉に置き換えてあげましょう

ここまで6つの表現を紹介しましたが、ひとつひとつをひも解いてみればとても簡単なことだったと思います。

保護者が変えるべきはマインドです。自分と同じ表現で伝わるだろう。という感覚をなくすことが、互いのストレスを軽減させるポイントです。自動車学校で習った「○○だろう」という考え方は事故につながる可能性があります。そうではなく「○○かもしれない」と考え、言葉を選んであげることが大切です。

外部リンク
発達障害児支援の人気資格|児童発達支援士公式サイト

そして先ほどまでとちょっとだけ矛盾した話をして終わりにします(笑)

それはあいまいな表現が苦手な一方で、急いでほしいときに「新幹線(特急)で行こう!」と伝えるほうが理解が出来たり、「静かにしましょう」というよりも「お口にチャック!」という表現がわかりやすかったりします。「声を小さく」というよりも「音量レベルを3にしよう!」これらは、子供によって異なりますが、このようなこともあるのです。

確かに「急ぐ」「静かに」「小さく」という言葉は明確なような気がしますが、これもあいまいですよね。どのくらい急ぐの?静かにって?小さくってどのくらい?どれもあいまいです。

それを子供がイメージしやすく「絵にしやすい」表現をすることで、なるほどあのくらい早くする必要があるのか!と理解が進むということです。