大人の発達障害【職場での困りごと解決法】上司・同僚との上手な付き合い方

大人になってから発達障害の診断を受けた方、または発達障害の特性を抱えながら働いている方の多くが、職場でのコミュニケーションや業務遂行に困りごとを感じているのではないでしょうか。

「上司に理解してもらえない」「同僚との関係がうまくいかない」「仕事の優先順位がわからない」といった悩みは決して珍しいことではありません。

今回の記事では、大人の発達障害の方が職場で直面しやすい困りごとと、その具体的な解決方法をお伝えしていきたいと思います。上司や同僚との関係構築、合理的配慮の上手な依頼方法、そして持続可能な働き方についてのヒントになれば幸いです。

 

大人の発達障害が職場で直面する5つの困りごと

大人の発達障害の方が職場で経験する困りごとには、共通したパターンがあります。まずは、どのような課題があるのかを具体的に把握することから始めましょう。

コミュニケーションの課題

職場でのコミュニケーションでは、相手の真意や皮肉がうまく理解できずに戸惑うことがあります。また、会議中にいつ発言すれば良いのかタイミングが掴めなかったり、電話対応で相手の要件を正確に把握することが難しいと感じる方も多いです。

ほかにも、上司からの指示が曖昧で具体的に何をすれば良いのか分からなかったり、同僚との何気ない雑談になかなか参加しにくいという悩みも頻繁に聞かれます。

例えば、上司から「できるだけ早く資料を作成して」と言われた時、「できるだけ早く」が具体的にいつまでなのかが分からず、結果的に期限を過ぎてしまうケースがあります。この背景には、ASD(自閉スペクトラム症)の特性により、非言語的なコミュニケーションの理解や相手の気持ちを推測することが困難な場合があったりします。

業務管理・時間管理の困難

業務を進める上で、複数の仕事を抱えた時にどれから取り組むべきか優先順位をつけることが難しいと感じることがあります。大切な締切をうっかり忘れてしまったり、作業にかかる時間を正確に見積もることが苦手で、予定が狂ってしまうこともあるでしょう。

また、突然業務内容が変更になったときにうまく対応できなかったり、細かい作業に時間をかけすぎて他の業務に影響が出てしまうという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

実行機能の困難により、計画を立てたり優先順位をつけたりすることが苦手で、一つの作業に集中しすぎて時間管理ができない場合もあります。

感覚過敏による職場環境の問題

オフィス環境では、蛍光灯の光がまぶしすぎて目が疲れてしまい、なかなか集中できないことがあります。電話の音やキーボードをタイピングする音が気になって仕事に集中しにくかったり、エアコンの風が直接当たったり温度調整がうまくいかずに体調を崩してしまうこともあります。

また、周りの方の香水や柔軟剤の匂いで気分が悪くなったり、オープンオフィスでは人の動きや視覚的な情報が多すぎて落ち着かないと感じる方も少なくありません。

職場の暗黙のルールへの対応困難

日本の職場には、明文化されていない暗黙のルールがたくさんあります。例えば、歓送迎会や忘年会などの社内イベントにどの程度参加すべきなのか判断に迷ったり、休憩時間をどのように過ごすのが適切なのか分からないことがあります。

また服装についても、職場によっては具体的なドレスコードが示されていない場合、どの程度カジュアルで良いのか悩ましいものです。

ストレス管理と心身の健康維持

職場でのストレスは、時として心身の健康に大きな影響を与えることがあります。仕事のことを考えると夜眠れなくなったり、人間関係での悩みが食欲不振につながることもあります。特に月曜日の朝になると強い不安感に襲われたり、疲労感がなかなか抜けずに日常生活にも支障をきたすこともあるんです。

 

上司への相談・配慮依頼の進め方

職場での困りごとを解決するためには、上司への理解と協力が不可欠です。適切な方法で相談・配慮依頼を行うことで、働きやすい環境を整えることができます。

カミングアウトのタイミングと方法

まず発達障害であることを職場で明かすかどうかは、慎重に検討したい大切な判断です。業務を進める上で明らかな困難が生じていて、一人では解決が難しいと感じている場合や、職場でのストレスが健康面に深刻な影響を与えている状況では、カミングアウトを考えてみても良いかもしれません。

また、適切な配慮さえあれば今よりもずっと能力を発揮できると確信している場合や、長期的にその職場で働き続けたいという意思がある場合も、検討する価値があるでしょう。

もし、カミングアウトを決めた場合には、医師からの診断書や意見書を用意し、ご自身の特性や必要な配慮を整理しておくことが大切です。他にも会社の障害者雇用制度について調べ、信頼できる人事担当者や上司に相談してみましょう。

実際の相談では、診断名と症状について分かりやすく説明し、業務への影響と必要な配慮を具体的に提案するようにしましょう。

具体的な配慮事例の提案方法

合理的配慮を依頼する際は、具体的で実現可能な提案をすることが重要です。

指示をもらう際は、口頭ではなくメールやチャットなど文字で残る形でお伝えいただけると安心です。そのため「できるだけ早く」といった曖昧な表現ではなく、具体的な期限や方法を明示した方が効果的です。定期的な1on1面談の機会があると、不明な点を気軽に確認できるでしょう。

また業務管理面では、タスク管理ツールを活用して仕事の内容を見える化したり、複数の業務が重なる場合は優先順位を明確にしていただけると効率が上がります。特に、集中を要する業務は午前中に配置し、突発的な変更があっても事前対処できるようにすることで心の準備ができます。

合理的配慮の法的根拠と活用法

2024年4月から、民間企業においても障害者への合理的配慮の提供が法的義務となりました。事業者は過度な負担とならない範囲で配慮を提供する必要があり、建設的対話を通じて適切な配慮を見つけていくことが求められています。

法律を盾にするのではなく、会社の事情や他の従業員への影響も考慮しながら段階的に調整していく姿勢が大切です。

 

 

同僚との関係性構築のコツ

職場での人間関係は、業務の円滑な遂行だけでなく、職場での居心地の良さにも大きく影響します。

特性を理解してもらうための工夫

診断名を明かさなくても、特性について理解してもらう方法があります。たとえば

「音に敏感で集中しにくいので、イヤホンを使用させてもらいます」

「口頭での指示だと忘れてしまうことがあるので、メールでいただけると助かります」

といった形で、自然に説明することができます。

また、困りごとだけでなく 「細かい作業や正確性が求められる業務は得意です」 「一つのことに集中して取り組むのが得意です」 といった強みを一緒に伝えることで、より建設的な理解を得られやすくなります。

 

職場で使える実践的な対処法

続いて日常的に使える具体的な対処法を紹介していきたいと思います。

業務効率化のためのツール活用

デジタルツールを活用することで、発達障害の方の苦手分野をカバーできます。Todoアプリで業務を可視化し、カレンダーアプリでスケジュール管理、リマインダー機能で締切管理が行えます。

また、チャットツールでのテキストベースのやり取りや、音声録音アプリで会議内容を記録することも効果的です。

集中力サポートには、ポモドーロタイマーで集中時間を管理したり、ホワイトノイズアプリで騒音対策を行うこともできます。

ストレス管理とセルフケア

ストレスを適切に管理するため、深呼吸やマインドフルネス瞑想、休憩時間の有効活用、適度な運動習慣の導入、十分な睡眠時間の確保が大切です。

緊急時には、トイレや給湯室での一時的な避難や、信頼できる同僚への相談、必要に応じた早退や休暇の取得をするようにしましょう。

 

転職を考える時の判断基準とポイント

現在の職場での調整が困難な場合、転職を検討することも一つの選択肢です。

転職を検討すべき状況

仕事のストレスが原因で精神的な不調が長期間続いている場合や、頭痛、胃痛、不眠といった身体的な症状が一向に改善しない状況では、転職を真剣に考える時期かもしれません。

転職活動での注意点

転職先を選ぶ際は、障害者雇用制度がしっかりと整備されている企業や、ダイバーシティ推進に積極的に取り組んでいる企業を候補に入れてみると良いでしょう。在宅勤務やフレックス制度など、働き方に柔軟性がある企業も魅力的です。

面接では、障害について説明するかどうかを慎重に判断し、ご自身の強みや特技については積極的にアピールしましょう。

 

サポートと理解の重要性

困りごとを解決するためには、家族や知人など信頼できる人の理解とサポートも重要な要素です。職場でどのような困りごとを感じているか、現在どんな対処法に取り組んでいるかを率直にお話しし、ストレスレベルや健康状態についても気軽に相談できる関係を築けると安心です。

解決が困難な場合は、発達障害者支援センターや障害者就業・生活支援センター、産業カウンセラーといった専門機関の力を借りることも大切です。

また、家族や支援者が発達障害について学ぶ機会を持つことも有効で、児童発達支援士などの資格講座では、発達障害の基本的な理解や支援方法について学ぶことができ、家族のサポート力向上にも役立ちます。

 

職場でのキャリア発展と将来展望

発達障害があっても、適切な環境と支援があればキャリアを発展させることは十分可能です。

強みを活かしたキャリア構築

発達障害の特性は、適切な環境が整えばむしろ強みとして活かすことができます。特に集中力の高さや細かい作業への正確性が求められるIT・システム開発、研究・開発職、品質管理、経理・財務といった分野で活躍されている方も多くいます。

また、従来とは異なる視点や創造性を活かせるデザインやクリエイティブな職種、企画・マーケティング、コンサルティングといった分野でも活躍の場が広がっています。

継続的なスキルアップ

時代の変化に対応し、オンライン講座を活用して自分のペースで学習を進めたり、資格取得によって専門性を高めることがキャリアアップにつながります。社内研修への積極的な参加や外部セミナーへの参加で、新しい知識や人脈を得ることも大切です。

 

【まとめ】大人の発達障害(職場での困りごと解決法)上司・同僚との上手な付き合い方

大人の発達障害の方が職場で直面する困りごとは、適切な理解と対処法があれば必ず改善できます。重要なのは、自分の特性を正しく理解し、それを職場の人たちと共有しながら、建設的な解決策を見つけていくことです。

一人で抱え込まず、上司、同僚、家族、そして専門家の力を借りながら、自分らしく働ける環境を作っていくことも大切です。職場での変化は一朝一夕には実現しないこともありますが、一歩ずつ着実に進んでいきましょう!

 

関連情報・参考資料

公的機関・専門団体

スキルアップに役立つ資格・講座

発達障害専門資格

メンタルヘルス・カウンセリング関連

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