子どもの知能指数を計るWISC-Ⅳ検査の基礎知識

WISC-Ⅳという言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。発達障害の診断を受けた後に、WISCを病院の先生に勧められて受けることになった。という方も多いかもしれません。このブログでは、WISCとはどういったものなのか、そしてWISCで何がわかるのかといった点を解説していきたいと思います。

WISC-Ⅳとは

WISC-Ⅳ検査は、心理学者のウェクスラーが開発した、世界中で使われている知能検査です。WISC-Ⅳ検査で発達障害の診断をすることはできませんが、お子さんの認知や行動性のバラつきを見るのに役に立ちます。知能検査にはいくつか種類がありますが、WISCは5歳0カ月~16歳11か月までの子どもを対象としており、発達障がい児もしくはグレーゾーンの子が受ける検査として知名度が高いものとなっております。

SNSなどで「WISC」と検索すると、「検査受けてきた」「点数の差が激しかった」などという書き込みがすぐに見つかる程、有名で良く行われている検査なのです。

WISCは現時点では「WISC-Ⅳ」と表現されます。「Ⅳ」というのは、改訂された版数を表しています。10年ちょっと程度のスパンで更新されています。

WISC-Ⅳの検査指標は

WISC-IV 知能検査は、10種類の基本下位検査と、5種の補助下位検査の合計15の検査で構成されています。4つの指標がありますので、4分類を紹介します。

  • 言語理解指標
  • 知覚推理指標
  • ワーキングメモリー指標
  • 処理速度指標

これらを検査者と子どもと1対1で実施します。所要時間は個人差がかなり大きいですが、30分~60分程度となることが多いようです。各指標の得点から全検査IQという得点がわかるようになります。少しわかりにくいので、検査指標のひとつずつをもう少し解説します。

言語理解指標

基本下位検査➡類似・単語・理解
補助下位検査➡知識・語の推理

ここでは言語による理解・推理・思考力に関する指標を検査します。

知覚推理指標

基本下位検査➡積み木模様・絵の概念・行列の推理
補助下位検査➡絵の完成

ここでは視覚情報からものごとを把握したり推理する力、また視覚情報にあわせて体を動かす力に関する指標を検査します。

ワーキングメモリ―指標

基本下位検査➡数唱・語音整理
補助下位検査➡算数

情報を一時的に記憶することができるかに関する指標を検査します。ワーキングメモリ―というとADHDのことをすぐ思い浮かべる方が多いことでしょう。ADHDの特性の強さなどが具体的にわかるようになります。

処理速度指標

基本下位検査➡符号・記号探し
補助下位検査➡絵の抹消

視覚情報を処理するスピードに関する指標を検査します。

WISC-Ⅳ検査で発達障害診断ができる?

まず重要なことは「WISC検査では発達障害の診断はできない」という事。ここは勘違いしないようにしてください。発達障害の診断は、DSM-5という他の基準により診断が下ります。

では、WISC検査は何のために行うのでしょう。

それは、発達の凸凹状況を明確に見えるかするためです。病院で発達障害(自閉スペクトラム症・ADHD・学習障害)と診断されても、その中でどういう特徴があるのか?という部分が明確にならない場合があります。そんな時に便利なのがこのWISCなのです。WISC検査をすることで、先ほど紹介した検査指標の得点のばらつきから、子どもの得手不得手を明確にすることができます。得手不得手が明確に見えることで、子どものへのサポート方法も明確になるでしょう。またサポートすべきでない部分(自力でやらせるべき点)もわかるようになるため、過保護になりすぎず、自分の力で最後までやり切る力を伸ばすことにも繋がります。

DSM-5は発達障害の診断のためにやるものであり、WISCは発達障がい児の具体的なサポート方法を見えるかするための検査だと言えます。

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WISC-Ⅳの結果の見方

WISC-Ⅳでは、先ほど紹介した4つの指標にくわえ、全検査IQという総合得点のようなものの合計5つを数値化した結果を見ることができます。100をその年齢の平均値として、子どもの得点を見ることができます。イメージとしては下記のような形で結果がでます。

このように結果が出ます。上記の結果であれば、言語理解と知覚推理には平均の範囲内だが、ワーキングメモリが少し弱く、処理速度が著しく弱いという事がわかるでしょう。このようにして子どもの苦手な何なのかが明確になるのです。そして発達障がい児の多くは上記の結果のように、得点の差がかなり大きくなるようです。(20点以上の差)この差が大きければ大きいほど本人の苦しみや生活しにくさも大きくなると言われています。発達障害を凸凹と表現するゆえんでもあります。

実際にはこの結果をもとに、検査をしてくれた心理士さんなどが細かな支援方法などを話してくれますので、そこで一緒に今後の対応を決めていくという流れになっていくでしょう。

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WISC-Ⅳはどこで受けられるの?

WISC-Ⅳは病院以外でも検査を受けることができるのが特徴です。発達障害の診断は病院でなければできませんが、その後に受けるべきWISCは病院以外でも受けられるという事です。主な場所は下記の通りです。

  • 精神科
  • 心療内科
  • 民間の療育施設
  • 民間のカウンセリングルーム
  • 大学の相談室

このような場所でWISC検査を受けることができます。といってもすべての精神科や心療内科で必ず受けられるというものでもありませんので、各都道府県の「発達障害支援センター」などに問い合わせして確認してみると良いでしょう。インターネットで「○○県 発達障害支援センター」と検索するとすぐに情報が確認できると思います。

WISCは比較的容易に検査を受けられると思ってよいでしょう。ただし、適応年齢が明確に定められていますので、適応年齢外の場合は検査を受けることができませんのでご注意ください。(適応年齢:5歳~16歳11か月)

【まとめ】子どもの知能指数を計るWISC-Ⅳ検査の基礎知識

以上でWISC-Ⅳについての記事は終了となります。

筆者の個人的な意見としては、WISC-Ⅳは積極的に受けるべきだと思います。WISC-Ⅳの目的は、子どものことを知り適切なサポートを行うための検査であるからです。特性をしっかりと把握することで、保護者の皆様の「なんでこんなことも出来ないの?」というストレスが軽減できる可能性もあります。

もちろん、子どものストレスや生きづらさも軽減されることでしょう。

保護者にとっても、子どもにとってもメリットしかないと思いますので、是非お近くの相談窓口でWISC検査を実施している施設を調べてみましょう!前向きな一歩を踏み出しましょう!