発達障害児のコミュニケーション力を伸ばす支援を!

発達障害児の多くは「コミュニケーション力」の部分で悩みを抱えることになります。コミュニケーションがうまく取れないがために人間関係の構築が難しく、いじめや嫌がらせを受ける対象になりやすくなります。そうなると発達障害の2次障害へと繋がっていきます。
このように発達障害児とコミュニケーション力は切っても切り離せない関係だと言えるでしょう。そこで今回は、コミュニケーション力を伸ばす支援について紹介します。

コミュ力の定義とは?

物凄く根本的な部分ですが、まずは定義を確認していきましょう。この共通認識がなければこの後の話も入ってこないでしょう。しかし、もし私があなたに「コミュ力って何ですか?」と聴いたら何と答えますか?明確に答えられますか?そしてその答えは、あなたの周りの方と絶対に同じだと言えるでしょうか?恐らく多くの方がNOでしょう。言葉というものは実は100人いれば100通りの解釈があります。その人なりの解釈が必ずあります。実はそういったものも妨げのひとつになったりするので、まずは定義の確認です。

気持・意見などを、言葉などを通じて相手に伝えること。通じ合い。

(google辞書より引用)

社会生活を営む人間の間で行われる知覚・感情・思考の伝達

(Wikipediaより引用)

コミュニケーション(英: communication)とは、「伝達」「通信」「意思疎通」などの意味の表現

(Webilio辞書より引用)

このように辞書によっても多少の意味合いが異なります。何が正しいと言う事ではなく、ここでは共通する部分を拾い「知覚・感情・思考を言葉などを通じて相手に伝えたり受け取る事」としておきましょう。この定義が正しいというつもりはありませんが、コミュニケーションとは「自分の感情を伝えること」でもあるし「相手の思考を理解すること」でもあるという認識を持ってください。

コミュ力というとたまに「説明が上手な人」「話すことが上手な人」という認識を持たれている方がいらっしゃいます。しかしいずれの辞書でも「話し方」がどうと言う事は書いてありません。あくまで双方の情報交換や意思疎通がコミュ力だということになります。

発達障害児のコミュ力の特徴

発達障害児は先ほど定義した意味のコミュ力が低いとよく言われます。主な特徴としては下記が挙げられます。

  1. 場の空気を読むことが苦手
  2. 相手の表情から感情を読み取ることが苦手
  3. 言葉をストレートに受け取ってしまう傾向がある
  4. 順序だてて説明することが苦手
  5. 比喩が理解できない
  6. 仮定の話が理解できない
  7. 音より文字や絵の方が理解しやすい
  8. 思ったことをそのまま口にしてしまう
  9. 吃音やどもりの特性がある

これらは代表的な特徴であり、他にも細かな傾向があります。いずれにしてもコミュニケーション力に関しては難しさを感じる子が多く、2次障害に繋がるのもコミュ力が起因していることが多くあります。2次障害とは発達障害の特性によって、いじめ・不登校・引きこもり・うつ病・精神疾患などを患ってしまうことをいいます。発達障害そのものが問題というよりは、その特性により今あげた2次障害に繋がることの方が大きな問題であると言われており、発達障害児の支援において2次障害に繋がらないように対処をすることが一般的です。そのために療育というものが存在します。療育は発達障害自体を治そうとしているものではありません。2次障害を防ぐために社会性を身につけていくのが療育なのです。

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コミュ力を伸ばす前に知るべきこと

まず知っておくべきことは、コミュニケーション力を伸ばす前に「人とコミュニケーションをとることは楽しいことだよ」と言う事を理解させることが非常に重要になることが多いです。というのも発達障害児の多くは、友人関係でトラブルの経験がある子がほとんどです。トラブルとまでいかなくても、話し方や話している内容が意味が分からないという理由でいじられたり、嫌がらせを受けたりしていることが非常に多いのです。そのため「コミュニケーション=嫌な事」として認識している子も多いでしょう。

この感情を持ったままいかなる支援を行ったとしても効果は出ないでしょう。断言します。絶対に効果はあらわれません。

順序が大切です。もし子供がコミュニケーションにたいして前向きでない場合は、過去に何かしらの嫌な思い出があると考え、その嫌な思い出を良い思い出で塗り替えるのが先決なのです。皆さんもトラウマになっていることがあるとしたら、そのことに触れたくありませんよね。トレーニングなんて絶対したくありませんよね。出来れば避けて通りたいものでしょう。

そのことを理解し、まずやるべきは「コミュニケーションって楽しいな」と思わせることです。そのためには支援を行う人と子供との間で積極的なコミュニケーションをとったり、傾聴の姿勢を徹底して取り続け、どんなにどもっても詰まっても意味が分からなくても、訂正をせずただ「受け入れる」聴き方をすることです。ここが初めの一歩となります。これを続けていき、ひとりの支援士に対して心を開き話し始めたら、他の人とも話ができる環境を作ってあげて成功体験を積み重ねていきましょう。

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まずはコミュニケーションを楽しい!と思わせることが大切!
そのために1対1の対話を楽しみましょう!
決して訂正したり意見を述べたりせず、傾聴し続けることです!

コミュ力を伸ばすトレーニング

では基本を理解したうえで、具体的なコミュ力を伸ばすトレーニングを見ていきましょう!ここで紹介するものは何も発達障害児に限った話ではありません。健常児の子供でコミュニケーションが苦手という子にも有効ですので、是非お試しください。

発音練習と声の大きさコントロールトレーング

まずは基礎編として発音練習をしましょう。この時に何を言うかなんてことは関係ありません。あいうえおから順番でも構いません。コミュニケーションが怖いなと思っている子供は、発声や発音が明確になっていないことがあります。それがゆえにさらにもじもじした話し方になってしまう。その結果「何言ってるかわかんね~」などとクラスメイトに言われてしまうことになります。そのため物凄く基本的な事ですが、「ハキハキ」話せるようにすることが先決!技術論はその後です。

そしてもうひとつ同じタイミングでやりたいのが声の大きさをコントロールする練習です。これは場の空気を考えて自分の声の大きさをコントロールするために行います。まず初めは声のボリュームを1~5段階くらいに分けます。例えば1はひそひそ話くらい。5は応援合戦で出す声くらいなど。言葉で説明するというよりは実際にやる方が良いでしょう。自分の声を1~5でコントロールできるようになったら、次にどの場面でどのボリュームの声を出すのが適切かを一緒に考えていきます。授業中に消しゴムを借りる時のボリュームは?といった具合です。声の大きさを適切に使えるようになるだけでもトラブルは減るでしょう。

定型挨拶トレーニング(自己紹介等)

子供の生活を考え起こりうるシチュエーションを想定しトレーニングしましょう。ある程度こういう時はこうする!というフォーマットを決めてしまった方が良いでしょう。実はこれは大人でも同じなのですが、話をする時になんとなく・・・。というのはビジネスの世界ではナンセンスです。分かり易く話すためにはPREP法を使おうとかこのフレームワークの方がいいなと決めるわけです。フレームワークというのがその型(フォーマット)にあたります。そのためこれは発達障害児だからとか子供だからというのは関係ないのです。

【シチュエーション例】

  • 学校でおはようの挨拶を言うとき
  • 初めて会った子に自己紹介をするとき
  • 友達を一緒に遊ぼうと誘うとき
  • 友達からの誘いを断るとき
  • 習い事の先生に質問をするとき
  • 目上のひとにお願いをするとき

など無数にあります。そのすべてでこういう言い方をしてみようかと一緒に作戦を立ててフォーマットを決めていけるといいですね。この時もゲーム感覚で楽しく取り組むようにしてください。まだコミュニケーションに対して怖さが残っている場合も多いですから、そのあたりは十分に気を付けながらやるようにしましょう。

感情当てトレーニング

こちらはとてもシンプルですが、クイズのような形で出来る面白トレーニングです。さまざまな表情のカードを用意しそれぞれどのような感情を表しているのか当てていくものです。私のお勧めは絵カードよりも生の写真です。今の時代であればインターネット上に人の顔写真は無数にあります。その写真を1人ずつ表示させ「この人はどういう気持ちかな?」という感じでやっていきましょう。

さらに慣れてきたり、他の子と一緒にトレーニングするときにお勧めなのが「カルタ風」で遊ぶことです。絵カードや人物写真カードを数十枚用意して、支援士が「起こっている顔!」といって「はい!」といって該当のカードを取っていくゲームです。絵カードよりも人物写真の方が細かなニュアンスも伝わるので、かるたをやれるくらいになっているのであれば、是非人物写真でやってみてください。

【まとめ】発達障害児のコミュニケーション力を伸ばす支援を!

以上で発達障害児のコミュニケーション力を伸ばす支援を!という記事を終わりにしたいと思います。

コミュ力を伸ばそうと思ったからといっていきなりありとあらゆるトレーニングを実施することはお勧めしません。子供の気持ちも理解してあげながらうまーく誘導していきましょう。コミュニケーション力は一生の財産になる可能性が高いスキルです。保護者や支援をする人がしっかりとそのことを認識し対応をしてあげてください。

最後までご覧いただきありがとうございました。