小学生のADHD(注意欠如・多動症)に有効な療育支援

小学生でADHD(注意欠如・多動症)の特性を持つ子はどのような特徴があるのでしょうか?一般的にはじっとしていられない、落ち着きがないなどと言われることが多いADHDですが、一度しっかりと整理してみましょう。特徴を理解したうえで、どのような療育方法が有効なのかも合わせて確認していきます。

小学生のADHD(注意欠如・多動症)特徴

まずはADHD(注意欠如・多動症)の特徴からまとめていきたいと思います。

  • 必要なものをなくす、忘れ物が多い
  • 順序だてて考えることが苦手である
  • 期日や時間を守れない
  • イライラしやすく感情的になる
  • 常に手や足を動かしている
  • 長時間座っていられない
  • 一方的に話し続けることがある

小学生のADHD(注意欠如・多動症)の療育支援

現在、10人に1人がADHDではないかと言われるほど、発達障害やADHDと診断される子は増加しています。しかし療育現場は正直整っているとは到底言えない状態なのです。療育センターへの通所は1年以上の待ちが発生している所が非常に多いという現状なのです。文部科学省の調査によると、発達障害とされる子どもが推計約60万人いるとされていますが、そのうち4割弱は特別な支援を受けていないといいます。この現状を目の当たりにした保護者は一体どうしたらよいのでしょうか。問題が山積しているこの状況を根本から変えるには、行政の力が不可欠になりますが、それには時間もかかります。そのため、今出来る療育に目を向けていく必要があるでしょう。

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そもそも療育とは?

療育については詳細を書いた記事がありますので、そちらをご確認ください。

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簡単にまとめると、医療と教育両面から発達障害児を支援していくというのが療育の基本的な考え方となります。療育の目的としては、社会に適応できるようにというのが大まかな目的となります。そのため、療育を受けられないと社会(学校生活やその後の社会生活)に支障をきたす可能性があると言う事なのです。

子供の将来的な自立と言う事が、教育の最大の目的でもあると思います。その目的を達せなくなる可能性があるのです。そのためADHD・自閉症・学習障害・アスペルガーなどの発達障害の診断がでたら早めの療育を受けるべきなのです。

家庭で出来る療育支援とは?

まず療育と言っても子供の年齢によって大きく異なります。幼児なのか小学生なのか。それによって効果の出る療育方法は異なってきます。また療育と聞くとなにかたいそれたことのように感じるかもしれませんが、ふたを開ければとてもシンプルなことが多いものです。幼稚園でも普通にこういうのやっているよな。そんなものが多かったりします。そのため、家庭でも十分に実践することが可能です。

しかし、それならなぜ療育センターに皆いくのでしょうか。それはやはり保護者の負担の大きさでしょう。当然療育の種類が家庭の場合は豊富ではないと言う事もあるかもしれませんが、一番大きな理由は保護者の大変さです。我が子のこととなるとどうしても感情的になってしまい、子供の能力を見極めたり引き出すことが難しい。いくら療育をやっても改善が見られないと、子供にあたってしまったり、ストレスがさらに増大していくなんてこともあるでしょう。そういったことを防ぐためも療育センターがもっと普及していくことを望みます。

ここでは家庭で出来る簡単な療育支援を紹介していきます。

療育支援① 感覚統合訓練

発達障がいのお子様は感覚過敏や鈍麻、協調運動の困難さからぎこちなさや不器用さがあります。不器用なくらいそんな問題じゃないのでは?と思われるかもしれませんが、これらはコミュニケーションスキルや社会性スキルの発達に大きく影響を与えると言われています。それらを感覚統合訓練で改善することが出来ます。感覚統合とは、五感からの感覚刺激により脳で考え、行動を決めることです。遊びや運動を通して視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、平行感覚などに刺激を与え、様々な感覚を正常に働かせて日常生活に適応する方法を学ぶのが感覚統合訓練です。

感覚統合訓練ではゲーム感覚で楽しく行うことが重要です。下記に感覚統合訓練になるゲームを紹介します。どれも簡単なものばかりなので、是非実践をしてみてください。

  • 指で子供の背中に文字を書きあてるゲーム
  • 袋の中に手を入れて、何が入っているかあてるゲーム
  • 平均台をわたるゲーム
  • ボールプールの中から種類の違うボールを探すゲーム
  • ブランコ遊び
  • グラグラ橋(不安定な場所)を歩く
  • さまざまな素材の上を歩く

療育支援② アンガーマネジメント

アンガーマネジメントとは、自分の怒りやイライラの原因を知り上手にコントロールするためのスキルですADHDの子供は特に理由もなくかんしゃくを起こしたり、突然キレて手が付けられなくなることがあります。その時に対処法を親子で確認すると良いでしょう。あまり難しく考えずに、「イライラしたらその場を一度立ち去る」や「深呼吸を一回する」「自分の中でリセット合図を作る」などこういったところから始めましょう。そんなことでいいの?と思われるかもしれませんが、療育センターで実施している療育もこのような内容なのです。

特に指パッチンをしたらイライラがキレイサッパリ!というおまじないを自分にかけると、案外効果があるのです。

療育支援③ 発達障害児支援関係の資格を取る

最後に直接的な療育ではないものの、とても効果の高い案を紹介します。それが発達障害児支援関係の資格を取得することです。様々な資格があるのですが、特にお勧めなのは知識偏重型の資格ではなく、実践ですぐに役立つような資格がお勧めです。発達障害のことを学術的に深く知っても、子供への接し方がうまく出来なければ全く意味がありません。

外部リンク
発達障害児支援の代表資格 児童発達支援士

実は、発達障害児への療育をする時に最も大切なことは「何をするのかではなく、どのように働き掛けるのか?」なのです。同じ行為をしたとしても、叱責しながら鬼のような形相で無理やりやらせるのと、子供のペースを観察しながら、特性を見極めつつ対応してやらせるのでは効果が違うと想像できるはずです。そのため、「方法論」ではなく「接し方やアプローチ」を学ぶべきだと私は感じます。

療育センターが普及すべきだと思う理由の一つがこれです。今の時代情報は簡単に共有できます。そのため方法論はインターネットで嫌というほど出てくるでしょう。しかしそれがうまく出来るかどうかは別の話。それは接し方を学んでいるかどうかの差なのです。ここをカバーしない限り療育は絶対にうまくいきません。

発達障害児支援関係の資格をまとめた記事も用意しておりますので、詳しくはそちらをご確認ください。

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ADHDの子は自己肯定感が高まりにくい

発達障害児の支援を行う際に、言われるのが「自己肯定感を低下させないように」です。

このように言われるのには理由があります。それは、発達障害児は人に指摘されることが多くなるためどうしても自己肯定感が高まりにくくなるからです。さらに自己肯定感が低くなることで、不登校や引きこもり、自殺へと繋がるケースも多いため、自己肯定感のことが強調されます。

しかし、実はADHDの子供に関しては更に注意が必要なのです。なぜかというとADHDの特性を持つ子は、脳の報酬系の神経回路がうまく機能しづらいという特徴があるのですが、この報酬系というのは、自己肯定感や自尊心を司る領域でもあるのです。そのためこの機能が機能しずらい=自己肯定感が高まりにくいという事が言えるのです。そのため社会不適応感を感じるようになり、不平不満が増えたり、薬物やアルコールに依存することが多くなると言われています。

そのためADHDの子の場合は定型発達児や他の発達障害の子供以上に、自己肯定感に配慮した対応が求められると言えます。

【まとめ】小学生のADHD(注意欠如・多動症)に有効な療育支援

いかがだったでしょうか。小学生のADHD(注意欠如・多動性症)の特徴と療育支援についてお分かりいただけたでしょうか?もっと詳細を把握したい方は、医療関係のホームページを確認していただくと病院がチェック項目を紹介していたりしますのでそちらを参考にされると良いでしょう。

私が発達障害児支援で最も大切だと思っていることは、記事中でも書いた通り

「なにをするかではなく、どのように働き掛けるか」

このことです。うまく働きかけが出来るのであれば正直何をやってもいいんです。それはなぜか。教育で最も大切なことは「自己重要感を高める事」だからです。療育の方法を調べると分かりますが、どれも「子供の自己重要感を低下させないように」と言うメッセージが含まれています。そう、実はシンプルなのです。しかし、ADHDなどの特性を持つこの場合は、その特性を理解しておかないとどうしても「なんでじっとしていられないの!」などと言ってしまいがち。だからこそ正しい知識は必要と言う事ですね。

最後までご覧いただきありがとうございました。