強迫性障害って何だろう? – 経験者が伝える基礎知識とセルフケア

みなさん、こんにちは。今回は「脅迫性障害」について紹介をしたいと思います。脅迫性障害について知っている方もそうでない方も、この記事を通じて知って頂けたら幸いです。

強迫性障害の症状に気づいたきっかけと向き合い方(体験談)

タイトルにもありますが、実は私も強迫性障害で悩んだことがありました。最初に気づいたのは、大学3年の頃です。毎朝の準備に異常に時間がかかるようになり、「ドアの鍵、絶対確認しなきゃ」「手を洗っても、洗っても、まだ不安」という思いが強くなっていきました。他にも、テスト前に「もう一回確認しよう」が何度も続いたり、「これで大丈夫かな?」という不安が消えなかったり・・・もしかしたら皆さんも、似たような経験があるかもしれません。私の場合はこれらの不安が徐々に強くなり「完璧にできていないと不安で仕方ない」という思いが日常生活を支配するようになってしまいました。そんな時、たまたまネットで「強迫性障害」という言葉を見つけて、「あれ?もしかして…」と思ったのが始まりでした。

最初は自身が脅迫性障害であるという事を認めたくなく、「自分はただの心配性なだけ」「もっと頑張れば治る」そう思い込んでいました。しかし、一人で抱え込むことで、かえって症状は悪化していきました。

ここで皆さんに知っていただきたいのは、強迫性障害は決して「性格の弱さ」や「怠け」が原因ではないということ。誰にでも起こりうる、症状であり風邪やインフルエンザと同じように病気であったということです。

それでは、強迫性障害って具体的にどんな症状なのかを、もう少し詳しく紹介したいと思います。

 

強迫性障害(OCD)の原因・症状・特徴を知ろう

強迫性障害はOCD(Obsessive-Compulsive Disorder)とも呼ばれています。いきなりの横文字に戸惑いもあるかと思いますが、どんな病気なのかをわかりやすく紹介していきたいと思います。

どんな症状があるのか?

強迫性障害を理解する上で最も重要なのは、「強迫観念」と「強迫行為」という2つの特徴です。「強迫観念」は、頭から離れない考えや不安のこと。「強迫行為」は、その不安を和らげるために行う行動のことを指します。強迫観念を打ち消すために強迫行為に及ぶことが多いです。

例えば、大学生Aさんは、毎朝の準備に2時間以上かかっていました。「髪の毛がしっかりと揃っていないと、今日は何か悪いことが起きる」という考えが頭から離れず、何度も何度も髪型を直したり、服を着替えたりしていたそうです。本人も「意味がないとわかっているのに、やめられない」とモヤモヤしていました。また、Aさんは、レポート提出の際にも「誤字があったら恥ずかしい」という不安から、一つの文章を30回以上読み返してしまい、締め切りに間に合わないことが続いていたのです。

このように、誰でも多少の心配や確認行為をすることはありますが、それが日常生活に支障をきたすレベルになると要注意です。1日のうち1時間以上これらの考えや行動に時間を取られる場合、強迫性障害の可能性を考えてみると良いかもしれません。

強迫性障害なぜ起こるのか?

強迫性障害の原因については、生物学的、心理的、環境的な要因が複雑に絡み合っていると考えられています。例えば、高校生のBくんは幼い頃から「きちんとしていないと叱られる」という環境で育ち、些細なミスも許されない雰囲気の中で生活してきました。次第に「完璧でなければならない」という思いが強くなり、テスト前には同じページを何度も読み返したり、ノートの字が曲がっていると一からやり直したりするようになっていきました。

このように、心理面では完璧主義的な性格傾向や、ストレスへの対処方法が影響することがあります。また、脳の特定の部分の活動の違いや、セロトニンなどの神経伝達物質の働きの変化も関係していることがわかっています。

 現代社会での新たな課題

最近では、SNSの影響も無視できません。ある女子高生は、インスタグラムへの投稿に3時間以上かけることもあるそうです。「完璧な写真じゃないと、フォロワーに嫌われてしまう」という不安から、何百枚も写真を撮り直し、文章も何度も書き直してしまうそうです。また、コロナ禍の影響で、手洗いや消毒への不安が強まったケースも多く見られます。以前は気にならなかった方でも、「もしかしたら」という思いから、手洗いが1回30分以上になってしまうこともあるようです。

日常生活への影響を理解する

このように強迫性障害の影響は、生活のさまざまな場面に現れます。たとえば、学生の場合、授業の内容を完璧に記録しようとするあまり、先生の話に集中できなくなってしまうことがあります。「すべてのノートを取り切れていないかもしれない」という不安から、友達に何度も確認を求めたり、録音を繰り返し聞いたりすることで、かえって学習効率が落ちてしまうのです。仕事や学業以外でも、人間関係に影響が出ることがあります。「相手を不快にさせていないか」という考えが頭から離れず、何度も謝罪のメッセージを送ってしまったり、過去の会話を延々と思い返したりすることで、新しい関係を築くことが難しくなることもあります。

 強迫性障害は治らない!?

ここで大切なのは、強迫性障害は決して珍しい病気ではないということです。世界的に見ても、生涯でおよそ50人に1人が経験するとされています。また、適切な治療やケアによって、症状が改善する可能性が高いことも分かっているので安心して下さい。最近では、認知行動療法という心理療法が効果的とされています。これは、考え方のクセやパターンに気づき、少しずつ変えていく方法です。必要に応じて薬物療法を組み合わせることで、より効果的な改善が期待できます。実際、治療を受けた方の多くが「以前より楽になった」と実感されています。完全に症状がなくなることを目指すのではなく、「この程度なら付き合っていける」というバランスを見つけていくことが、回復の重要なポイントとなります。

外部リンク
参考:国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター こころの情報サイト「強迫性障害」より

参考2:国立精神・神経医療研究センター 「OCD(強迫性障害)」より

 

強迫性障害の改善方法とセルフケアのポイント

ここまでは強迫性障害について紹介をしてきました。次は具体的な改善方法やセルフケアについてです。強迫性障害との向き合い方について、実践的な方法を紹介していきたいと思います。

 その1:気づきから行動へ移す

強迫症状に気づいた時、自分を責めてしまったり、「そんなことはない」と自身で症状を受け入れることができなかったりと、解決への最初の一歩を踏み出すことができない場合があります。そこで、勇気を持って1歩踏み出すことで解決へ向かうことができます。中学2年生Cさんは、教室の机の上を何度も拭き続けてしまい、休み時間が取れない状況が続いていました。そこで、担任の先生に相談したところ、スクールカウンセラーを紹介してもらい、少しずつ症状が改善していったそうです。

このように、一人で抱え込まずに誰かに話してみることが、大きな転機になることがあります。話す相手は、家族や先生、友達など、信頼できる人で構いません。

 その2:専門家に相談する

「専門家に相談」と聞くと、ハードルが高く感じるかもしれません。実際、30代会社員のDさんは、「カウンセリングに行くなんて、何か特別なことをする気がして…」と最初は躊躇していたそうです。でも、かかりつけ医に相談したところ、適切な専門医を紹介してもらえ、今では「もっと早く相談すれば良かった」と話しています。その際の専門家に相談する時期の目安としては、「日常生活に支障が出始めた時」「家族や友人が心配し始めた時」「自分なりの工夫では改善が見られない時」などが挙げられます。

その3:家族や周囲の関わり方

家族や周りの対応の仕方でも、症状の変化が出てきます。例えば、小学6年生の娘さんの強迫症状に気づいた家族の例では、最初は「早くしなさい」と急かしていたそうですが、それがかえって症状を悪化させていました。医師や専門家のアドバイスを受け

  • 本人のペースを尊重する
  • 「完璧じゃなくていいんだよ」と声をかける
  • 小さな進歩を認め、励ます
  • 一緒に対処法を考える

このような関わり方に変更したところ、少しずつ改善が見られたそうです。周りの環境によって脅迫症状の原因を取り除くことが可能となります。

 その4:日々のケアで意識したいこと

日常生活の中で実践できるセルフケアは、強迫性障害の症状改善に大きな役割を果たします。そのため、まずは生活リズムを整えることから始めましょう。朝の準備に時間がかかりすぎないよう、前日のうちにできることは済ませておく、確認行為は回数を決めておくなど、具体的な工夫を取り入れていくことが大切です。

生活している中で、不安が強くなった時は、深呼吸をして気持ちを落ち着かせたり、「完璧である必要はない」と自分に語りかけたりすることが効果的です。他にも、不安な気持ちを紙に書き出してみると、心が整理されることもあります。好きな音楽を聴く、軽い運動をする、読書をするなど、自分なりのリラックス方法を見つけることも大切です。

また、時間管理の工夫として、スケジュール帳やタイマーを活用して強迫行為にかける時間に制限を設けたり、症状の変化や効果のあった対処法を簡単に記録したりすることもお勧めします。

ただし、セルフケアはすべてを一度に実践しようとせず、自分のペースで無理なく取り入れていくことが大切です。回復に向けて良い時もあれば、逆に症状が強まる時もあります。自分のペースを守りながら、継続的にケアを行うことが大切です。

外部リンク
参考:公益社団法人 日本精神神経学会 「松永寿人先生に「強迫性障害」を訊く」

参考2:厚生労働省 こころの耳 専門家からのアドバイス

 

Q&A強迫性障害についてよくある質問と回答

強迫性障害について、よくある質問をまとめてみました。気になる項目があったら参考になれば幸いです。

 治療期間について

Q:「治療にはどのくらいの期間が必要なんですか?」

A:治療期間は人によって大きく異なります。数ヶ月で改善する方もいれば、1年以上かかる場合もあります。例えば、20代後半のある会社員は、半年間の認知行動療法で「毎日の確認行為が3分の1くらいに減った」と話していました。一方で、40代の主婦は「2年くらいかけてゆっくり良くなっていった」とのこと。

大切なのは、焦らずに自分のペースで進むことです。毎日の小さな変化を認めながら、一歩ずつ前に進んでいくのがコツです。

薬物療法について

Q:「薬は必ず飲まないといけないのですか?」

A:薬物療法が必須というわけではありません。症状の程度や生活への影響によって、医師と相談しながら決めていきます。例えば、大学受験を控えた18歳の男子学生は、最初は薬なしで認知行動療法だけを試みました。でも、不安が強くて眠れない日が続いたため、一時的に薬のサポートを受けることに。その結果、「頭が少し整理しやすくなった」と感じられたそうです。

日常生活との両立

Q:「一人暮らしで仕事もしているのですが、治療は続けられますか?」

A:最近では、オンラインカウンセリングなど、通院以外の選択肢も増えてきています。例えば、通院での対面カウンセリングが難しい場合でも、オンライン診療を組み合わせるなど自分に合ったペースで治療をしていくことも可能になります。

また、専門職として働く32歳の男性は、産業医との面談をきっかけに治療を始めました。「上司に話すかどうか迷ったけれど、伝えてみたら意外と理解があって、通院時間も確保できました」という例もありました。

再発への不安

Q:「一度良くなっても、また症状は出てくるのでしょうか?」

A:これは多くの方が抱える不安です。再発の可能性はゼロではありませんが、それは「後戻り」ではなく、新しい状況への「適応過程」として捉えることもできます。以前の経験を活かして、より上手に対処できるようになるケース多いそうです。

 

【まとめ】強迫性障害って何だろう? – 経験者が伝える基礎知識とセルフケア

強迫性障害と向き合う中で最も大切なのは、「完璧である必要はない」ということです。完璧主義は必ずしも悪いことではありませんが、それが自分を縛りつけるものになっているなら、少し力を抜いてみることも必要です。また、回復の道のりは、決して直線的ではありません。良い時もあれば、調子を崩す時もあります。でも、それは当たり前のことなんです。日々の小さな変化に目を向け、その一つ一つを認めていくことが、確実な一歩につながっていきます。

また、「治らないのでは?」という不安を持っている方も多いと思います。でも、強迫性障害は必ず良くなる可能性がある病気です。焦らずに、症状がなくならなくても「これくらいなら付き合っていける」という自分なりのバランスを見つけることで気持ちが楽になるかもしれません。

そして何より大切なことは、一人悩んだり苦しんだりする必要はありません。偏見を気にする方もいるかもしれませんが、風邪やインフルエンザなどと同じ病気であり、誰かに助けを求めることは、決して弱さではありません。

むしろ、それは大きな勇気と強さの表れだと思います。全てを解決してもらえなくても、気持ちを分かち合える人がいるというだけでも、心は軽くなることがあります。回復への道のりは、人それぞれ違うので焦らず自分のペースで、一歩ずつ前に進んでいきましょう。