発達障害と似ている強迫性障害(強迫症)とは?

皆さんは「強迫性障害」というものは聞いたことはありますか?「脅迫」ではなく「強迫」です。強迫性障害は日常生活に支障が出るほど強い精神疾患の1つです。今回は強迫性障害について、また発達障害との類似点や関連性などを紹介します。

発達障害とは

すでにご存知の方も多いかと思いますが、まずは発達障害について紹介します。発達障害とは生まれつきの脳機能の特性や障害です。外見から分かり辛いことがあり、当事者や保護者が周囲からの理解を得られず苦しむケースが多くあります。また、同じ発達障害でも、他の発達障害が併発していたり、重度が違っていたり、その特性の違いから困りごとは人それぞれまったく違う場合もあります。

発達障害は上記の画像のように3つに分類されています。DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル)というアメリカ精神医学会が発行している診断分類では、さらに細かくカテゴリー分けがされていますが、今回はこの3つの分類を紹介します。

自閉スペクトラム症(ASD)

ここには「アスペルガー」「高機能自閉症」「広汎性発達障害」なども含まれています。強く現れている特性や診断時期によって表現が異なる場合があります。主な特徴としては「コミュニケーションや対人関係で困難さがある」「一部の物事にこだわりの強さがある」「感覚の偏りがある(感覚過敏や鈍感)」などが挙げられます。

注意欠如・多動性障害(ADHD)

これは注意欠如・多動症とも呼ばれることもあります。「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの症状が見られます。全ての特性が同じように現れる場合や、1つの特性が強く現れる場合もあり、人によってどの特性が強く現れるかが違ってきます。

学習障害(LD)

「限局性学習症」とも呼ばれる学習障害は、基本的には全般的な知的発達に遅れが見られることはなくても「聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する能力に習得や困難さが生じる発達障害」です。読字障害(ディスレクシア)、書字障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)と困難さを示すものによってタイプ分けされています。

強迫性障害(強迫症)とは

強迫症(強迫性障害、Obsessive-Compulsive Disorder:OCD)とは「きわめて強い不安感や不快感(強迫観念)をもち、それを打ち消すための行為(強迫行為)を繰り返す。強迫症の症状を強迫症状といいます。強迫症状は、「強迫観念」と「強迫行為」があり、このふたつが存在して初めて強迫症と診断されます。」(e-ヘルスネットより引用)

例えば「手が汚れているんじゃないか」「家の鍵を閉めたかな?」などが繰り返し頭の中に浮かんできて、手を洗う行為や鍵が閉まっているか確認する行為を何度も繰り返して止められないなんてことはありませんか?

そして止められなくなって日常生活や仕事、学業などに影響が出ている場合は強迫性障害の可能性があるとされています。

強迫性障害を抱えている本人が「こんな気にしてバカバカしい」と思い、行動を止めようとしますが、その意志に反して「強迫観念」と「強迫行為」が出てきてしまいます。

重症化すると脅迫行為に大半の時間を取られてしまい、他のことをする時間が無くなる、遅刻が多くなる、他にも強迫行為によって周囲の人を巻き込んでしまい、友人や家族との人間関係が悪化したり、自宅から出られなくなってしまうケースもあるようです。

人によって症状の現れ方は様々です。そのため強迫性障害でも多くみられる4つの症状を紹介します。

不潔恐怖(汚染恐怖)

不潔恐怖(汚染恐怖)では汚れに対して過度に反応して、何度も手を洗ったり繰り返し入浴や洗濯などを行います。「汚い」と感じる場所に近づけなくなり、ドアノブや手すりなどを触れなくなるケースもあります。

加害恐怖

自分は「いけないことをしてしまうのではないか、誰かを傷つけたり犯罪行為をしてしまった」という思考にとらわれて何度も確認したり罪に苦しむことを指します。周囲に対してしつこく自分は問題を起こしていないか確認をしたり、新聞やテレビなどで確認をします。

不完全恐怖

自分が不完全に見えるものに対して、過度に不快感が出る状態を指します。これは本人が自覚してない場合もあります。整理整頓がやめられなかったり、何度も物事の修正を行ったりします。

確認行為

戸締り・ガス栓・電気のスイッチ・鍵をかけたかなどを過剰に何度も確認する症状です。もしかしたら開いてるかもしれない、実は消えてないかも?と確認したはずなのに、不安に感じて大丈夫と確信を得ることができません。こちらも他者に確認させることが多くあり、重症化することも少なくありません。

どんな人がなりやすいの?

「強迫性障害」は真面目で几帳面、細かいことにこだわるという性格の人に比較的多くみられます。発症のきっかけには、男性の場合、学業不振や進学、過労など、女性は異性関係、結婚、妊娠、出産、育児の悩みなどが多くみられます。(大阪府医師会のサイトより引用)

また、日本では50~100人に1人の割合で強迫性障害にかかってると言われています。わりと身近な病気だと言えるでしょう。そして症状が似ているとして挙げられるのが発達障害です。併発することもあり、特に自閉スペクトラム症(ASD)の場合はこだわりの強さが強迫性障害と似ていることがあります。

ASDに気付かずに、発達障害の二次障害として強迫性障害が現れて、初めて精神科を受診してASDの診断がされるケースも多くあるそうです。このケースで、ASDでもともと手洗いを丁寧にするというこだわりがあった場合、手洗いの時間が更に長くなるといった症状の悪化が見られる例もあります。

他にもこれまでは細部へのこだわりがあったものの、気になっていなかったが強迫性障害により新たなこだわりが現れたり、不潔恐怖が現れる場合もあるそうです。

治療法は?

現在では、「薬物療法」と「認知行動療法」により回復が期待できるようです。症状の程度や現れ方は人によって違いますので、本人の状態や、併発している病気などに合わせて治療が行われています。自己判断のみで終わらせずに、専門医などに相談し時間をかけて焦らずに治療を進めていきましょう。

自己肯定感を下げないようにする

発達障害の二次障害として強迫性障害が現れる場合は、ストレスや不安の積み重ねや自己肯定感の低下が何度も起こり現れている可能性があります。

周囲から理解を得られない、本人も気にしているのに繰り返し注意や叱責をされることは強いストレスに繋がってしまいます。発達障害の特性を持つ方は、どうしても自己肯定感が下がる経験が多く自己肯定感が低い傾向にあります。

ですので、家庭内や発達障がい児が通う施設などで自己肯定感を高める工夫や、下がらない接し方を行えると良いでしょう。以下の記事ですぐに行える自己肯定感を高める3つの掟を紹介しています。

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また、発達障がい児を支援するための資格を学ぶのも1つの手段といえます。最近注目されている3つの資格について、学べる内容や受講料金、対象者などをまとめて紹介した記事があります。是非こちらもご覧ください!

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【まとめ】発達障害と似ている強迫性障害(強迫症)とは?

以上が強迫性障害についての紹介になりました。

強迫性障害は真面目な人や、1つの事を追求したい人がなりやすいとされています。これは決して悪いことではなく、1つの個性と言えるでしょう。自分のことを知り、上手く付き合えるようになれば、ストレスが減り悪循環に陥ることも無くなり、再発を減らすこともできるようです。

もし、強迫性障害かもしれないとなっても、周囲の人や専門家を頼っても恥ずかしくないですし、問題は全くありません。焦らずに1つずつ出来ることをしていきましょう。

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